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子育て中の女性研究者支援 これまでの支援による効果

2024年4月16日更新

支援による効果(2022(令和4)年度)

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、その他)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3件法で回答を得た。
 利用者の困難や問題のうち、「改善できた」ものとして、補助者に事務業務を依頼したことで、出校時は研究や学生指導、授業準備等に時間を充てることができたこと、子どもの急な体調不良の際も電話やメールで業務依頼等を行い、予定していた業務を進めることができたこと、補助者の支援により論文投稿や報告書作成時の書類作成を円滑に進めることが挙げられた。なお、「やや改善できた」項目は、研究計画や投稿論文執筆時に先行研究を調べ、整理すること、「改善できなかった」項目は、新たな研究テーマ・解析方法へ着手することであった。この理由として、9月まで育児休業期間であり、産前の状態を思い出すだけで精一杯であったためとの回答があった。

2)目標の達成度合い
 2022年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「やや達成できた」、「達成できなかった」の3件法で回答を得た。
 「達成できた」ことのうち成果として挙げられたのは、論文投稿に向けたデータ整理、論文投稿、子どもの生活変化への対応であった。「やや達成できた」項目として、外部資金の申請が挙げられ、その理由として、複数申請を計画していたものの、1件のみの申請となったとの回答があった。また、学生指導の時間の確保についても、0歳児は保育園でのお預かり時間が短く、十分には確保できなかったため、同様に「やや達成できた」と評された。いずれの被支援者も「達成できなかった」とする項目はなかった。

3)支援により得た効果
 2022年度における本制度による支援によって、どのような効果が得られたか、自由記述で回答を得た。
 両被支援者は、支援補助者の方の業務は滞りなく遂行されたと述べ、論文投稿の執筆要領のチェックやケアレスミスの確認、図表の作成補助、データ解析および考察を進めて取りまとめてもらうなど、補助者のサポートが直接的・間接的に研究力の維持に多大なる影響を与えたとの声があった。また、子どもの幼稚園入園や引っ越しなど、生活環境の変化のあった被支援者も、補助により研究ペースを崩すことなく、研究を進めることができた述べている。人的支援により研究活動の維持が保たれたが、環境の変化に伴う私生活と研究の両立には、長期的な、継続した支援が必要である。

支援による効果(2021(令和3)年度)

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、学内業務、学外業務等)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3件法で回答を得た。
 自身で挙げた問題点が「改善できた」と回答された部分をみると、出産により大学での滞在時間が大幅に減ったものの、補助により出校時の時間を研究や学生指導、授業準備などに充てることができた、子供の急な体調不良により在宅勤務をせざるを得ない場合でも大学に補助者がいることで、予定していた業務を進めることができた、新たな研究テーマ・解析方法に着手するための時間を確保できた、など支援が有効に働いている様子がうかがえる。
 「やや改善できた」と回答された部分をみても、新型コロナウィルスにより、臨時休園や濃厚接触者になる可能性を考慮し、あらかじめ休めない業務がある場合は、補助者と調整を行った、補助により時間的な余裕ができたため、論文を執筆することができた、また子供と過ごす時間も増やすことができたなどポジティブな結果が示された。
 「改善されなかった」項目は3名ともみられず、新型コロナウィルスにより保育園や幼稚園の突然の休園など育児負担が増加するなかであっても、本補助制度を活用することにより、各業務を遂行することができたことが明らかとなった。研究室運営や学生指導など、子育て中の女性研究者が従来の業務に集中するためのみならず、新型コロナウィルスの蔓延による不安定な社会情勢の中での子育てをサポートするためにも、継続的な支援は重要である。

2)目標の達成度合い
 2021年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「半分ほど達成できた」、「達成できなかった」の3件法で回答を得た。その結果、3名がそれぞれ目標を4~5件挙げた。
 「達成できた」と回答されたのは、研究・教育・業務に関わるものが挙げられ、「論文執筆・投稿」、「外部資金獲得」、「円滑な学会運営への貢献」、「海外との共同研究の遂行」、「海外の学会での成果発表」、「博士論文執筆支援」などの回答があった。
 「半分ほど達成できた」との回答を得たものは、研究・教育・業務に関わるものでは「学生指導への十分な時間の確保」、「前年度の調査データを集計、学会発表、投稿論文」が挙げられた。学生指導について、半分のみの達成となった理由として、雑用との併行が困難であったことや、コロナ感染によるオンラインやメールでの指導となったことが心残りであると述べている研究者もいた。子育てに関わることでは、「子供の教育にかける時間を作る」目標があり、ある程度時間が取れたものの、充分な時間をかけることはできなかったとの回答があった。
 「達成できなかった」との回答も1件あり、「研究助成金を申請し、研究費を獲得する」目標があったものの、申請のための時間を確保できなかったためと述べている。
 研究成果の国内外への発信や、研究者自身の研究の発展、周囲の人間への指導などはおおむねの目標が達成されたものの、満足のできるレベルに達していない項目があることが明らかになった。

3)支援により得た効果
 支援対象者による成果報告会(2022年3月1日)にて研究者3名による発表がオンラインにて行われた。
 成果報告では、研究成果(学会発表、論文執筆、外部資金の獲得、特許出願、共同研究やプロジェクトの実施など)や生活の変化について報告が行われ、支援により事務的な業務を補助してもらうことで、研究のメインとなる計画・実施・考察に取り組むことができたことや、研究を滞りなく進められたことが示された。
 学内研究者一時支援事業を利用している研究者や、研究補助者も出席し、支援に関する意見交換や、育児と研究の進め方の情報交換が行われた。成果報告会や事後調査から、子育て世帯へのプレッシャーやコロナ禍における子育ての負担の増加などがうかがえ、このような環境で多くの研究者が苦労していることがうかがえた。本支援をより広く周知し、このような苦労を抱えている研究者の負担を減らすことができるよう、支援長期的に継続するための検討を行いたい。

2020(令和2)年度の支援による効果

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、学内業務、学外業務等)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3件法で回答を得た。
 自身で挙げた問題点が「改善できた」と回答された部分をみると、補助により業務量の負荷が6~7割減った、実験補助により実験時間の確保が可能となった、など支援が有効に働いている様子がうかがえる。「やや改善できた」と回答された部分では、オンライン授業の準備負担の増加と保育の増加により困難だった状況が示されており、研究補助が得られて改善できた点がオンライン対応の負荷に相殺されてしまったとの回答もあった。一方、支援者への業務の分担で時間的な余裕ができたため、論文を執筆することができたというポジティブな結果も示された。
 一方、「改善できなかった」と回答された部分を見ると、コロナ禍の業務負荷の高さに加え保育の必要があったため、単著の出版準備が進まないという回答や、限られた時間で集中して実験を行うため休息が取れない、など女性研究者が置かれている困難な状況が浮き彫りになった。
 人的支援により研究活動の維持が保たれたが、コロナ禍において突然の休校や休園による育児負担が増えており、継続した支援が必要である。

2)目標の達成度合い
 2020年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「半分ほど達成できた」、「達成できなかった」の3件法で回答を得た。その結果、5名それぞれが目標を2~5件挙げた。研究・教育・業務に関わることでは「学部生、大学院生の教育指導」、「実験の遂行による論文執筆」、「手元データの整理と論文執筆」、「業務の効率化」、「海外との共同研究の遂行」、「オンラインによる高水準の教育の維持」などが達成できた点として挙げられた。達成できなかった点としては「インタビューやフィールドワークが進められなかった」点が挙げられた。
 子育てに関わることでは、「子どもとの時間を確保する」目標が達成できなかったと述べている研究者もいた。コロナ禍により掲げた目標が達成できなかったことについては、特に対面の調査が必要であるフィールドワークにおける研究において顕著であった。
 支援者に依頼した業務の遂行度合いについては、5名中3名の研究者が依頼作業においてすべて「遂行できた」と回答した。他2名も「遂行できた」が半分以上を占め、「遂行できなかった」項目は5名とも見られなかった。「実験手順をまとめた資料や教材を作成してくれた。」、「積極的に文献収集を行ってくれた。」「電話やメールでの問い合わせ、データ入力などの業務を進めてくださり研究がスムーズに進んだ。」、「打ち合わせを行う中で様々なアイデアを得ることができた。」など支援者の能力が高く評価された。

3)支援により得た効果
 支援対象者による支援事業による成果報告会(2021年3月15日)にて研究者5名による発表がオンラインにて行われた。成果報告では、研究成果や生活の変化などについて報告が行われ、支援により業務負担が軽減し、研究活動が継続可能となり、研究成果(学会発表、論文執筆、外部資金の獲得、特許出願など)が可能となったことが示された。研究補助者も出席し、支援に関する意見交換が行われ、教員が支援者にとってロールモデルとして機能している、などの意見が挙げられた。成果報告会や事後調査の結果から、コロナ禍における女性の育児、家事の負担はますます増加しており、教育研究活動に影響を及ぼしている様子がうかがえた。今後、これらの課題を解決するための方法や支援について検討したい。

2019(令和1)年度の支援による効果

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、学内業務、学外業務等)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3段階で評価させた。
 自身で挙げた問題点が「やや改善できた」と回答された部分をみると、支援者に作業を託すことで時間的余裕を作ることができた、学生の実験的指導を支援者に任せることができた、急遽自分でできなくなった実験を支援者に担当してもらうことで滞ることなく進めることができた、など人的支援が有効に働いている様子がうかがえる。また、上司に申し入れして現状を理解してもらうことができ、業務のオートメーション化に向けた予算を付けることができたなどの効果も得た。急な子どもの発熱などで仕事の予定が立てにくい場合には、家族の支えがあり、問題を改善できたとの回答も見られた。
 一方、「改善できなかった」と回答された部分を見ると、研究時間を確保したいが子どものお迎えなどにより必ず決まった時間に退室しなければならないため確保は難しい、前年度以上に学外での授業が増えたため、本務校での業務とのバランスが難しい、などの問題が認められた。人的支援により、研究活動の維持が可能となったが、研究活動のより一層の活発化のためには、さらなる支援が必要であることがわかった。

2)目標の達成度合い
 2019(令和1)年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「やや達成できた」、「達成できなかった」の3段階で評価させた。その結果、3名それぞれが目標を2~5件挙げ、そのほとんどが「達成できた」、「やや達成できた」と回答した。達成できたこととして、研究に関わることでは「国際共同研究を一層促進させる」、「海外学会への参加、そのための英語論文執筆」、「辞書執筆のためのプロジェクトへの参加」、「本学協定校との交流をサポートする」、「実験を行い、論文投稿する」、「授業や講義の内容を改定する」、「国際共同研究を一層促進させる」などであり、子育てに関わることでは「授業を休まずに行う」、「子どもの勉学をサポートする」、が挙げられた。一方、掲げた目標が達成できなかったことについては「単著の執筆」のみであった。支援によってたてた目標のほとんどが達成されたことが分かる。
 支援者に依頼した業務の遂行度合いについては、3名中3名の研究者がすべての依頼作業において「遂行できた」と回答しており、「会計入力をすぐに覚えて即戦力になってくれた」、「事務への提出物など迅速に行ってくれた」、「グラフ作成、データ入力を迅速に行い、専門的なソフトウェアを勉強・熟知し、問題なく短期間に業務を行ってくれた」、「日常的な実験を行ってくれた」、「講義プリントの印刷や実験準備を行ってくれた」、など、支援者の能力を高く評価する傾向がみられた。

3)支援により得た効果
 支援による成果の一例(一部抜粋)を挙げると、「研究室での限られた在室時間に、集中して研究の物事を考えられた」、「講義内で行う簡単な実験の準備や、教材開発を行い、授業内容の改善を図ることができた。」、「AAの方に事務作業を行っていただき、本務に専念できる時間が増えた。」など、研究者本人でなければできない仕事に集中する時間の確保に人的サポートが有効に働いたことがわかる。

 本支援により、被支援者らの研究活動は滞りなく進められ、外部資金の獲得、論文掲載、学会発表などの件数が増加し、特許申請も認められるなど、研究成果の向上が認められた。また、支援を受けることにより「研究に専念する時間」の確保につながっていることが明らかとなった。

2018(平成30)年度の支援による効果

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、学内業務、学外業務等)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3段階で評価させた。その結果、3名中3名が自身で挙げた問題点が「改善できた」、「やや改善できた」と回答していた。問題解決につながった理由として、支援者に作業を託すことで時間的余裕を作ることができた、学生の実験的指導を支援者に任せることができた、急遽自分でできなくなった実験を支援者に担当してもらうことで滞ることなく進めることができた、など人的支援が有効に働いている様子がうかがえる。また、支援者への業務の分担で時間的な余裕ができたため、国際学会や大学イベントによる海外出張に参加し、成果発表することができたとの回答もあり、支援員の配置が研究成果の向上と発信に大いに効果があることも示された。

2)目標の達成度合い
 2018(平成30)年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「やや達成できた」、「達成できなかった」の3段階で評価させた。その結果、3名それぞれが目標を2~5件挙げ、そのほとんどが「達成できた」、「やや達成できた」と回答した。達成できたこととして、研究に関わることでは「研究成果を国際誌に公表する」、「国際的な共同研究や国際交流を推進する」、「充分な研究費を獲得する」、「論文、総説を書く」などであり、子育てに関わることでは「授業を休まずに行う(子どもが病気になると、休講にしなければならないが、元気でいてくれた)」、「今年度小学校にあがった長女の教育をする」などが挙げられた。一方、掲げた目標が達成できなかったことについては、企業との連携を図ることができなかったのみであり、支援によってたてた目標のほとんどが達成されたことが分かる。
支援者に依頼した業務の遂行度合いについては、3名中3名の研究者がすべての依頼作業において「遂行できた」と回答しており、「困難なステップがいくつかあるが、根気強く実験を続けていただけた」、「複数の予算を管理しており、入力が複雑であるが、適切に会計処理を行っていただけた」、「論文を書くための資料集めや、総説の文章の査読を行っていただいた」、「新人に対する実験の指導や、各種測定機器の使用方法の指導等、充分に業務を果たしていた」など、支援者の能力を高く評価する傾向がみられた。

3)支援により得た効果
 支援による成果の一例(一部抜粋)を挙げると、「研究室の運営や研究の推進において、本支援により、論文発表、学会参加、子育て(一般)など、目標の成果をあげることができた。研究費獲得、子育て(教育面)についても、ある程度の成果を上げることができた」、「2018年度後期から新たにLA科目を担当することになり、初めてだったこともあって、非常に多くの資料収集が必要になった。AAさんは、私の資料収集の目的や活用方法などの意図を的確に理解してくださり、短期間で効率的に情報を集めてくださり、かつ、パワーポイントの製作も一部行なってくださった。」、「こまめに土日に行われる研究集会に出て、人脈作りを行なってきた結果、来年度の国際学会でキーノートスピーチを依頼され、英国の出版社Bloomsbury Academic社E-Dictionaryの編集(50数か国を含む大規模なプロジェクト)に参加することが決まりました。」、「今年度は子どもが病気になってしまい、保育園を休むということはなかったが、自分自身が妊娠による自宅安静となってしまい、思うように大学に行くことができなくなってしまった。しかし、AAの方が、ずっと実験を行ってください、また試薬の発注やその会計入力も滞りなく進めてくれ、研究室の業務を進めることができた。私が学内外での授業や会議で研究室に行けないときにも実験を補助していただき、実験を進めることができた。」など、研究成果の向上だけでなく、精神的なサポートもなされたことがわかる。

 本支援により、被支援者らの研究活動は滞りなく進められ、外部資金の獲得、論文掲載、学会発表などの件数が増加するなど、研究成果の向上が認められた。また、支援を受けることにより「子育て」に関わる時間や余裕を確保することができたとの意見が認められ、本支援が研究者の研究成果の維持のみならず、研究力の向上と子育てに関わる時間の確保にもつながっていることが明らかとなった。

2017(平成29)年度の支援による効果

1)問題点の改善度合い
 仕事(研究、教育、学内業務、学外業務等)や子育てにおける困難な事や問題となっていることを5つ程度挙げて、改善の度合いについて「改善できた」、「やや改善できた」、「改善できなかった」の3段階で評価させた。その結果、4名中3名が自身で挙げた問題点が「改善できた」、「やや改善できた」と回答していた。問題解決につながった理由として、支援者に作業を託すことで時間的余裕を作ることができた、急遽自分でできなくなった実験を支援者に担当してもらうことで滞ることなく進めることができた、など人的支援が有効に働いている様子がうかがえる。昨年と同様に、子育て中の女性研究者が抱える問題点として挙げたものは、「教育・研究時間の十分な確保」、「子育て時間の減少、病気への対応」などであった。

2)目標の達成度合い
 2017(平成29)年度の目標を5つまで挙げて、達成の度合いについて「達成できた」、「やや達成できた」、「達成できなかった」の3段階で評価させた。その結果、4名中3名が目標を3~5件挙げ、うち2~4件は「達成できた」、「やや達成できた」と回答した。達成できたこととして、「科研費以外の助成金の獲得」、「論文掲載」、「子どもの進学・健康維持」などであった。一方、掲げた目標が達成できなかった理由として、「十分な時間が確保できなかった」、「研究以外の業務に時間を割く必要があったため」などが挙げられた。なお、支援者に依頼した業務の遂行度合いについては、4名中3名の研究者がすべての依頼作業において「遂行できた」と回答しており、「予想以上のスピードで実験をこなしていただいた」、「能力が優れており、仕事が丁寧であった」、「会計処理をはじめ、補佐的な事務処理を的確に行っていた」など、支援者の能力を高く評価する傾向がみられた。

3)支援により得た効果
 支援による成果の一例(一部抜粋)を挙げると、「研究室の運営や研究の推進において、本支援により、目標に近い成果(論文発表、学会参加、研究費獲得、子育て)をあげることができた。」、「AAさんに分担していただくことによって、大幅に私自身の作業量が減った。知識があるAAさんに助けていただいたおかげで、私自身が調べたり、対応する時間が大幅に減った。」、「子どもが保育園で流行っている病気にかかって、保育園を早退、休むことがあったが、継続的に行わなければ意味がない実験を研究補助員の支援により滞りなく進めることができた。子どもが理由で仕事をいつ休まなければいけなくなるのかという心理的不安から解放された。」など、研究成果の向上だけでなく、精神的なサポートもなされたことがわかる。

 本支援により、被支援者らの研究活動は滞りなく進められ、外部資金の獲得、論文掲載、学会発表などの件数が増加するなど、研究成果の向上が認められた。また、支援を受けることにより子どもの健康や進路など「子育て」に関わる心配事を解決するための時間や余裕を確保することができたとの意見があった。しかし一方で「研究の時間の確保以上に教育の時間の確保が必要」など、本支援だけでは解決することのできない問題も明らかとなり、子育てに関わらず、研究環境や研究体制を充実させるための支援の必要性が示唆された。

2016(平成28)年度の支援による効果

1)子育てと仕事の両立状況
 4名のうち2名が「ほぼ両立できている」と回答しており、1名は「あまり両立できていない」と回答した。(残り1名の回答は「どちらでもない」)

2)問題点の改善度合い
 子育て中の女性研究者が抱える問題点として挙げたものは、4名全員が「教育・研究時間の十分な確保」を挙げており、さらに「自身の体力」、「学内におけるコミュニケーションの問題」、「家事負担の増大、子育て時間の減少」などであった。改善度合いについては、「やや改善できた」と「改善できなかった」の回答が半数ずつを占めた。

3)目標の達成度合い
 支援前に研究者各自が設定した目標は、昨年度に引き続き「学会発表、論文、業績に関すること」、「共同研究に関すること」、「研究費獲得に関すること」、「学生指導に関すること」、「業務の効率化に関すること」、「子育てに関すること」であった。半数の研究者が「達成できなかった」と回答しており、昨年度と比較して設定した目標が達成できていない状況が明らかとなった。「達成できた」と回答した研究者においては、投稿論文数の増加、外部資金数の増加などがみられた。研究者の回答から、目標の達成度合いが低くなった理由は、研究以外の業務量の増加が最も多くなった。

4)支援により得た効果
 支援による成果の一例を挙げると、「研究費の会計手続き,研究室の維持(安全管理)などに目配りをしてもらった」、「補助者の方に事務処理を行ってもらうことで、これまで事務処理にあてていた時間を実験や学生指導に割くことができるようになり、研究の進展に効果があった」、「昨年度末以降に採択が決定した2件の外部資金も含めて、6件の異なる研究調査を行うことになった」などの効果が認められた。しかし、今年度は自身が設定した目標について「達成できなかった」との回答が増加した。

 この原因について被支援者の回答から考察すると、支援を利用した女性研究者が上位職に昇任 (准教授から教授へ)、または役職への就任(大型プログラムコーディネーター就任、センター長就任など)したことによる研究以外の業務量増加の影響が大きいと考えられる。今後は、子育てだけでなく上位職着任時における研究活動維持を目的とした支援の充実が必要と言える。

2015(平成27)年度の支援による効果

1)子育てと仕事の両立状況
 6 名のうち4 名が「ほぼ両立できている」と回答しており、1 名は「あまり両立できていない」と回答した。(残り1 名の回答は「どちらでもない」)

2)問題点の改善度合い
 子育て中の女性研究者が抱える問題点として挙げたものは、前年度までと同様に「論文作成のための時間確保ができないこと」、そしてそのことによる「研究費の獲得機会の減少」、さらに「自身の健康・体力」、「両親のケア(看護・介護)」、「学内におけるコミュニケーションの問題」、「子育て時間の確保」、「子どもの学童問題(長期休暇中の対応)」などであった。改善度合いについては、「やや改善できた」と「改善できなかった」の回答が約半数ずつとなった。

3)目標の達成度合い
 支援前に研究者各自が設定した目標は、主に「学会発表、論文、業績に関すること」、「共同研究に関すること」、「研究費に関すること」、「業務の効率化に関すること」、「研究室の管理に関すること」、「子育てに関すること」であった。ほとんどの研究者が「半分ほど達成できた」、「達成できた」と回答した。主な成果として、投稿論文数の増加、外部資金数の増加などがみられた。研究者の回答から、目標の達成度合いが低くなった理由として、時間確保が困難、業務量の増加、審査員や学会等の幹事・委員を複数担当、などを挙げていた。

4)支援により得た効果
 補助者を配置することにより研究活動の幅が広がり、研究デザインの立案・変更を効率よく行うことができ、論文執筆・投稿が迅速にできたなどの意見を多数得た。一例を挙げると、「目標には掲げなかったが特許を4 件出願することもできた」、「研究者のみで研究を行っていた時よりも幅広く多量のサンプルの処理が出来るようになり、研究のスピードが上昇した」、「補助者に依頼できることが多くあり、その時間を研究者自身の他の業務に当てることができた」、「研究室の環境づくり、雰囲気作りに効果があった」、「予備実験を行ってもらうことで貢献してもらい、実験が成功しやすくなった」などの支援効果が認められた。

 昨年度と同様に、6 名の女性研究者のほとんどが各自で掲げた高い目標を半分以上達成しており、論文投稿数の向上や研究スピードの上昇などについては研究補助者による継続的な支援が非常に有効であったと言える。一方で、研究者自身の体調管理や家庭生活との両立、学内外の責任ある立場に着任することも多々あり、研究補助者の配置以外の支援方法を検討する必要性が示唆された。

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