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理科実験支援事業
【平成21年度 小学6年 アジの解剖授業報告】

理科好きの子供たちが増えることを願って 
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動物のからだのはたらき(アジの解剖)5月29日 王子第三小学校
90分×2クラス

 

(注:中学生の「動物の世界(アジ解剖)」の授業は、6年生の内容に加え、「赤血球観察(光学顕微鏡)」と「脳の観察」を実施しました。)

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単元「動物のからだのはたらき」の授業として、アジの解剖を行いました。最初は先生の質問から始まります。「人間が生きていくのに、必要なものは何?」児童からは、「食べ物」、「酸素」という元気な答えが返ってきます。先生はそれに対し「魚(アジ)と人の食べ物の消化吸収の仕組みは大体同じですが、呼吸には違いがあります。魚はエラ呼吸であり、人は肺呼吸です。今日は、アジの解剖をしながら、それが実際にどうなっているかを調べましょう」。

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さあ、いよいよ解剖です。解剖ハサミとトレイ、アジが配られます。すでに死んでいるとはいえ、生き物に、自分ではさみを入れて、中身を見るのは多くの児童にとっては初体験です。アジは一人一匹。楽しみでしょうがないといった表情の児童もいれば、怯えた表情の児童もいます。

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最初は、外観の観察です。
今日の2つのテーマ「食べ物の消化吸収」「呼吸」にそって、口(食べ物の入口)、肛門(食べ物の出口)、エラ(水から血液へ酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出す器官)の観察をします。 まずは、アジの口が折りたたみ式になっており、大きく開くことにびっくり。続いて、肛門からフンが出てきて大騒ぎ。口とエラがつながっていることも発見しました(魚は口からエラに水を通して呼吸します)。

次は、いよいよ解剖です。解剖ハサミを使って、片側の腹を切り取りました。

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切り開いてすぐにみえるのは、精巣/卵巣および肝臓です。肝臓はレバーですので、食卓でもおなじみです(魚ではなく、牛・豚・鶏ですが見た目は同じです)。そのため、「これ、レバーでしょ」とあてる児童もいました。

「食べ物の通り道」がテーマですので、胃を探します。精巣/卵巣および肝臓を指でめくると出てくる、淡いピンク色でハート型の臓器が胃です。アジによって大きさが様々で、パンパンに膨れているものもあれば、小さいものもあります。これは、食後しばらくは、食べ物が胃にあるので、大きく膨れていますが、更に時間がたてば、食べ物は胃から出て、腸に移っていくので、胃は空っぽで小さくなってしまいます。

胃が見つかったところで、食道を探します。胃から口の方へ伸びている管、それが食道です。この頃には、大部分の児童が、解剖に慣れ楽しそうに食道を見つけていました。次は、腸を探します。胃から肛門に伸びる管が腸です。胃の周りには、腸以外にも幽門垂や肝臓などが付いていてわかりにくいため、肛門からたどっていくのが見つけるコツです。
腸の中には、吸収の途中の食べ物が入っています。

口→食道→胃→腸→肛門という食べ物の流れを全て見た後は、児童からの要望が多い「胃の中身を調べる」をしました。胃を切り開き、中身を出します。小魚の形が残ったものが入っている場合もあれば、ザラザラした骨の破片と、ドロドロの食べ物が混ざったものもあり、何も入っていない場合もあります。これはそのまま、胃の働きを示しています。口から食道を通って胃に入ってきた食べ物は、その時点ではほぼ元の形をしていますが、消化されることで、ドロドロのペーストになり、その後は胃からでて(胃が空っぽになる)、腸に移っていきます。

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2つ目のテーマ「呼吸」に移ります。
ここで、先生から児童へ「エラの色はなぜ赤黒いの?」。答えは、「血(血管)が通っているから」です。エラは、水から血液に酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出す器官なので、血管が通っているので赤黒いのです。続いての質問は「エラの数は何枚?」。重なっているため、一見、一枚に見えるエラですが、実は左右それぞれ4枚ずつ、合計8枚あります。そんなに多くの枚数がある理由は、表面積をふやして、酸素吸収量や二酸化炭素排出量を上げるためです。これは、人の肺も同じです。水からではなく、空気からという違いはありますが、肺胞によって表面積をふやし、酸素吸収量や二酸化炭素排出量を上げているのです。

酸素を取り込み、二酸化炭素を吐き出した血液を体中にめぐらせるためには、ポンプが必要ですが、その役割をしているのが心臓です。エラのすぐ近くにあります。形は小さな三角形、大人の人差し指の爪程度の大きさです。その小ささにびっくりしている、児童が大勢いました。色が赤黒いのは、エラ同様、血液が通っているからです。また、弾力がある手触りなのは、心臓が筋肉だからです。

2つのテーマ「食べ物の消化吸収」「呼吸」の観察を終えても、時間があったので、浮きぶくろの観察と、目のレンズの取り出しを行いました。浮き袋は、背骨にそってある細長い袋で、浮力の調整をする役目があります。

授業の最後は、ワークシートに取り組み、今日の体験を整理しました。食べ物の消化、呼吸について理解したことはもちろん、多くの感想も書いてくれました。「最初は気持ち悪かったけれど、途中から楽しくなってきた」「心臓が思ったよりずっと小さくてびっくり」「内臓が柔らかくて、驚いた」「エラが8枚もあることは知らなかった。酸素をたくさん吸うためだとわかって面白かった。」「目のレンズがきれいだった」

また、先生からは

「本物の魚を解剖することで、体験を通して、体のつくりを理解できてよかった。教科書の図や写真では実感することができない、生き物の手触りやにおい、内臓の色などを体験させることができてよかった。」「一人一匹のアジや解剖道具、専門的な知識など、学校だけでは実現できない授業が大学と組むことでできた。今後も続けてほしい」

との感想をいただきました。

 

 

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