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第8回グローバルリーダーシップ研究所オンラインセミナー 「なぜ女性リーダーが求められるのか~企業の女性育成策の今、そしてこれから」開催報告

2021年6月29日更新

野村先生セミナー資料トップ

2021年6月18日(金)16:40より女性活躍促進連携講座とグローバルリーダーシップ研究所の共催による第8回グローバルリーダーシップ研究所オンラインセミナーを開催しました。講演者は野村浩子氏(ジャーナリスト・東京家政学院大学特別招聘教授)であり、「なぜ女性リーダーが求められるのか~企業の女性育成策の今、そしてこれから」のタイトルでお話しいただきました。

野村浩子氏は、本学卒業後出版社に勤め、2003年には「日経ウーマン」の編集長を務められました。その後、日本初の女性リーダー向け月刊誌「日経EW」編集長、日本経済新聞社編集委員、政府・自治体の各種委員を歴任し、大学教授となられてからは多くの学生を指導されました。これまでに様々な上位職女性を対象とした取材や研究を行い、その成果を著書「女性リーダーが生まれるとき」、「女性に伝えたい 未来が変わる働き方」にまとめておられます。

講演は「PARTI 女性リーダー、世界の中で日本は今」、「PARTII 日本企業の女性育成の現状を課題」、「PARTIII 女性活躍の壁となる『アンコンシャス・バイアス』」の3部構成で進められました。

野村先生

「PARTI 女性リーダー、世界の中で日本は今」では、リーダーと聞いてどのような人を思い浮かべますか?の問いかけから始まり、政治・経済分野の女性リーダーの海外・日本を比較した結果についてお話いただきました。続いて、日本企業における新しい管理職像を示す女性課長、均等法世代の「生え抜き」女性執行役員、ヘッドハンティングによってさまざまな年代の女性リーダーが誕生していることを紹介しつつ、なぜこのような女性リーダーが求められているのか、との問いかけがなされました。野村氏は、企業の女性リーダーにインタビューした内容を紹介したうえで、企業が女性リーダーを求める理由、女性活躍を進める理由を「生産年齢人口が減るため」、「多様性が価値を生みイノベーションを起こすため」、「意思決定層を多様化することでリスクヘッジするため」、「女性の力を生かす職場づくりが変化のトリガーとなるため」の4点にまとめました。

「PARTII 日本企業の女性育成の現状を課題」では、女性リーダーそれぞれにおける初職からこれまでのライフストーリーとともに、一皮むけた経験(大きな成長につながった経験)について、野村氏のインタビュー調査結果をもとにご紹介いただきました。女性活躍促進のポイントは、「両立支援」と「キャリア形成支援」の両輪で進めることが大切であり、「経験が積めない」という負のスパイラルを断ち切ることが大切である、と説明し、女性育成のための企業の取組11点を紹介されました。

「PARTIII 女性活躍の壁となる『アンコンシャス・バイアス』」では、ステレオタイプバイアスの一つとしてジェンダー・バイアスとリーダーシップについて、野村氏が実施した大手企業25社2500人アンケート分析結果(2018年実施)をもとに説明がなされました。男性に望まれるリーダーシップ特性は「行動力があり、率先して行動する」などリーダー的特性が上位に位置しますが、女性に望まれるリーダーシップ特性は「礼儀正しい、周囲への気遣いがある」などフォロワー的特性が上位に位置していると説明されました。一方、組織リーダーに望まれるリーダーシップ特性は、男性のリーダーシップ特性と共通項が多く、女性との共通項は少ないことが示されました。つまり、リーダーは男性向きで、女性には向いていないという意識のバイアスがあり、女性の方がそのバイアスは強いということを示していますが、野村氏から「成果を上げるリーダーシップスタイルに男女差はない、このバイアスから抜け出そう!」との力強いメッセージが発信されました。
ジェンダー・バイアスの一つとして性別役割分業意識についても紹介がなされ、日本人女性の総労働時間が長いこと、フランスでは夫婦で家事育児を行い、家事ヘルパーを頼むのも当たり前、との状況をお話しいただきました。このようなアンコンシャス・バイアスをただすには、教育(研修)で気づきを促し、行動を変える仕組みを作り、強制力(クオータ制など)を持って変化を促すことが必要との発言をもって、本日の講演を終了しました。

小林先生と野村先生

「リーダー」とは肩書のある人、組織で地位を得ている人ではなく、誰もがリーダーシップを発揮し、集団や社会をリードすることができるという野村氏のメッセージは、参加者の心に深く印象付けられました。また、学生参加者に向けては、若いうちからチームのリーダーを引き受けよう、小さな成功体験や失敗体験を積み重ねることで少しずつ自信とリーダーシップが身につくので、まずは小さな一歩が大切である、とのメッセージをいただきました。質疑応答では30件以上の多様な質問・感想が寄せられ、司会の小林誠教授(グローバルリーダーシップ研究所 研究所長)との軽快なやり取りで大いに盛り上がりました。

このたびの講演会はオンライン会議ツールZoom Webinarを用いてのオンライン開催となりましたが、本学学生・教職員、高校生、一般を含め122名にご参加いただきました。講演会にご参加いただきました皆様に心よりお礼を申し上げます。

この講演会をきっかけに、多くの方々が自身のリーダーシップを様々な場面で発揮し、小さな変化を生み出し、その変化を積み重ねることで大きな変化へとつなげる人が増え、今後「世界で遅れを取る日本」が「世界をリードする日本」となることを心から期待しています。

文責 内藤 章江(グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)

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