IGLセミナー“International Perspectives on Diversity: Exploring Voter Preferences and Multiracial Coalition-Building in Britain and New York City”開催報告
2024年12月6日更新
2024年10月31日に、グローバルリーダーシップ研究所はMatthew Hepplewhite氏(オックスフォード大学博士後期課程、東京大学日本学術振興会特別研究員)とKen Silverman氏(ニューヨーク市立大学政治学博士後期課程、国際交流基金特別研究員)を迎え、国際社会とダイバーシティに関するセミナーを開催しました。このセミナーでは、イギリスの有権者選好およびニューヨークの多民族連合構築という二つのテーマに焦点を当て、国際比較の視点から政治的代表性と多様性の複雑さについて貴重な洞察を提供しました。
- 英国における有権者の選好
Matthew Hepplewhite氏は、英国における政治家の社会人口統計学的特徴と有権者の選好との間の関連性に焦点を当てました。イギリスで行われた独自の実験結果を含み、実験的研究と選挙データからの洞察が共有されました。その結果、イギリスにおける政治家は、特に学歴、かつての職業、階級といった点で、有権者が望むリーダー像と一致しないことが多いというミスマッチが明らかになりました。このギャップが、過去最高レベルの政治的幻滅と歴史的な低投票率の原因になっている可能性が示唆されました。
- ニューヨーク市における多民族連合構築
Ken Silverman氏は、世界的に最も民族的・言語的に多様な都市部のひとつであるニューヨーク市クイーンズ区の事例を紹介しました。ニューヨーク市議会議員選挙を分析することで、韓国系でもアジア系でもない選挙区で、韓国系アメリカ人候補ジュリー・ウォンが予想外の勝利を収めたことに注目されました。Ken Silverman氏は、ウォンの勝利は三つの要因(a. 新たな多数派候補としての彼女の立場、b. バランスの取れた多元的なメッセージングと戦略的なフレーミング、c. 超ローカルで横断的な問題を通じて有権者の幅広い連合)によるものだと主張しました。
本セミナーでは、英国における有権者の選好からニューヨーク市における連立構築まで、多様な民主主義国家における課題と機会に関するディスカッションを通じて、現代の政治システムにおける代表性と包摂性の重要性を議論しました。本イベントは、グローバルリーダーシップ研究所が行う「ダイバーシティ論」の公開授業として実施され、政治社会学の視点から国際社会とダイバーシティを議論することで、参加者も新たな発見を得ることができました。
文責:張 潔 (グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)
講演者より