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2025年10月31日更新
お茶の水女子大学は、創立150周年を記念し、次世代の女性大学経営人材の育成を目的とする大学経営ビジョナリー育成プロジェクトを実施しました。本プロジェクトは、女性アントレプレナーでありフィランソロピストの久能祐子氏のご支援のもと、京都大学および東京大学と連携して行われました。三大学から選抜された若手・中堅の女性教員9名がフェローとして参加し、相互の経験と知見を共有しながら学び合う貴重な機会となりました。
現在、日本の国立大学では意思決定層に女性人材が少ない状況です。女子学生、女性教員の増加、ひいては日本社会のダイバーシティを目指す国立大学においては、彼女たちのロールモデルやメンターともなる女性経営人材の育成は喫緊の課題です。本学は、こうした現状を踏まえ、女性が大学経営に携わるための知見と実践力を養うことを目的として、本プロジェクトを企画・運営しました。
海外研修に先立ち、オンラインによる2回事前研修会を実施しました。第1回事前研修会(7月8日開催)では、早稲田大学の本田桂子教授を講師にお迎えし、「大学経営ビジョナリー育成プロジェクト」をテーマにご講演をいただきました。あわせて、プロジェクト全体の目的や海外研修の意義について共有を行い、寄附者である久能祐子氏にもご出席いただき、女性リーダー育成に寄せる思いや、グローバルな視点から見た大学経営の在り方についてご講話をいただきました。第2回事前研修会(7月22日開催)では、フェローによるグループワークを中心に行い、それぞれの大学の課題や自身のリーダーシップに関するテーマを共有しました。ディスカッションを通じて、三大学の教員の意見交換が活発に行われ、海外研修に向けた学びの方向性を具体的に描く機会となりました。
2025年8月31日から9月6日にかけて、ワシントンD.C.およびニューヨークで研修を実施しました。フェローは、佐々木泰子学長(お茶の水女子大学)、藤井輝夫総長(東京大学)、稲垣恭子理事・副学長(京都大学)らの帯同のもと参加しました。
ワシントンD.C.では、S&R Evermay財団を訪問し、寄附者である久能祐子氏との懇談をはじめ、在米日本国大使館、NEDOワシントン事務所の関係者と意見交換を実施しました。ジョージ・ワシントン大学のYoshie Nakamura准教授による講演の後、フェローによる「大学経営―私のビジョン」「これからの大学と私」をテーマとしたショートピッチも行われました。
続くニューヨークでは、東京大学ニューヨークオフィスを訪問し、コロンビア大学のMerit Janow教授、JETROの三浦聡所長、JBICの中島裕行米州地域統括による講演を通じて、国際的な大学経営や産官学連携の実際を学びました。また、ヴァッサー大学を訪問し、Elizabeth Bradley学長をはじめとする教職員・学生との交流を通じて、大学のミッションとリーダーシップの在り方について意見を交わしました。
【S&R Evermay財団の前で】
【久能氏とフェローの懇談会】
【東京大学NYオフィスにて】
【ヴァッサー大学学長室にて】アメリカ研修終了後、9月24日にはお茶の水女子大学国際交流留学生プラザにて本研修の報告会を開催しました。報告会では、佐々木泰子学長の開会挨拶に始まり、各フェローが海外研修を通じて得た知見や今後の大学経営への提言を共有しました。フェローからは、多くの新たな気づきが得られたこと、参加者同士が大学の枠を超えて貴重なつながりを築けたことなど、研修を通じた成果とともに、本プロジェクトを企画したお茶の水女子大学への感謝の言葉が述べられました。
続いて、吉江尚子副学長(東京大学)、村井暁子特命教授(京都大学)、谷明人理事(お茶の水女子大学)、高橋喜博執行役(東京大学)による講評が行われ、フェローへの今後の活躍への励まし、そして次年度のビジョナリー育成プロジェクトへの期待が寄せられました。全体を通じて、大変ポジティブな感想が多く寄せられ、本プロジェクトの成果と今後への展望が強く感じられる場となりました。



本プロジェクトは、単なる研修に留まらず、大学の垣根を越えた女性研究者間の強固なネットワーク構築の礎となりました。フェロー一人ひとりが得たグローバルな視点と実践的な学びは、各大学の将来の経営戦略、そして日本の大学全体のダイバーシティ推進に大きく貢献するものと確信しています。本学は、今回の成果を更なる発展につなげるべく、今後も国内外の大学・機関との連携を深め、次世代を担う女性リーダーがその能力を最大限に発揮できる環境の構築を力強く推進してまいります。
文責:張 潔 (グローバルリーダーシップ研究所 特任講師)