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2026年2月25日更新
2月17日(火)に本学創立150周年を記念して、SDGs推進研究所主催、東京ガス株式会社共催、日本工営株式会社・埼玉大学協力の公開シンポジウム「災害レジリエントな社会の実現に向けて ~避難生活の質の向上を目指す~」を開催いたしました。当日は本学の関係者(教職員・学生等)のみならず、附属高校を含む学生のほか、自治体職員、企業関係者、一般など、100名を超える方々にご来場いただきました。5名の登壇者の方々のご講演後は質疑応答が行なわれ、防災に従事されている方々や大学生から熱心な質問が寄せられ、活発な議論が行われました。今回のシンポジウムが参加者の皆様の災害に備えた暮らしの質向上の一助となれば幸いです。
【日時】2026年2月17日(火)15:30~17:30
(14:30~15:30 OCHA-SDGs学生委員会によるポスター発表を実施)
【場所】お茶の水女子大学 共通講義棟2号館201室
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司会:小中 鉄雄 氏 SDGs推進研究所客員教授/埼玉大学研究機構教授
司会を務められた小中鉄雄氏(本研究所客員教授)からは、シンポジウム開催にあたり埼玉大学からのお力添えがあった経緯について言及がありました。 |
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開会挨拶・趣旨説明:斎藤 悦子 氏 お茶の水女子大学 SDGs推進研究所 所長
斎藤悦子氏(本研究所 所長)からは、シンポジウム開会の挨拶ならびに開催の趣旨説明がありました。
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講演1
東京ガス株式会社の千野祥瑚氏からは、本学の須藤紀子氏(本学基幹研究院自然科学系教授/講演2「備蓄食品の選び方」)との共同研究についてお話がありました。東京ガスグループでは、「人によりそい、社会をささえ、未来を紡ぐエネルギーになる」を経営理念に掲げ、脱炭素やレジリエンス等の社会課題解決に取り組んでいらっしゃいます。共同研究では、東京ガスと連携協定を締結している自治体と「避難生活の質の向上」に関する課題の調査・見える化をしております。本調査では、それぞれの自治体毎に共通・特有の課題があることがわかりました。今回の共同研究で得た知見をもとに、引き続き本学と連携して、自治体のレジリエンス向上に資する伴走支援を行っていくとのお話がありました。 |
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講演2
須藤紀子氏(本学基幹研究院自然科学系教授)からは、災害時に「自助ありき」「在宅避難(=避難所に行かずに自宅で避難生活を送ること)ありき」の現状を踏まえた提言が寄せられました。今はどの自治体も3~7日分の家庭備蓄がある前提で公的備蓄を用意していること、また住民全員分の指定避難所を自治体は用意できない現状がありますが、この事実を認識している住民が少ないことを須藤氏は懸念点として挙げられました。各家庭が家庭備蓄を用意するにあたっては、「普段の食事に近い食事が大事」「災害時に食べたいと思えるものでなければ、役に立たない」という提言がなされました。これは須藤氏が本学学生30名を対象に行った実験(2日間、本学の備蓄食品だけを食べて生活してもらう。備蓄食品以外のものを食べた時点で実験から「脱落」となる)の結果に基づく提言でした。本学には「アルファ米、乾パン、水(1.5リットルのペットボトル)」といった備蓄食品がありますが、第1回の実験では30名中、6名の脱落者が出たとのことです。学生からは「お肉が欲しい」という声が多く、また、他に食べるものがなくとも「食べたくないものは食べない」という傾向が見られました1)。配布する食品を工夫した第2回目の実験では、参加者25名中、脱落者は1名に留まりました(2日目の昼に体調が悪くなって他のものが食べたくなり、ガムと温かい飲料を飲んで脱落)。食品の多様さがストレスの緩和につながり、実験完遂者の増加につながったと見られます2)。さらに、須藤氏からは食器の洗浄が必要ないように、食器が含まれていてそのまま捨てられる食品、食べ残しや生ごみが出ないように一食分の量は少なめが望ましいという、食品衛生の観点からの提言もありました。 1)竹田ら(2018)日本災害食学会誌 5; 2: 29-37 |
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講演3
日本工営株式会社の池本久利氏からは、大規模災害後の衛生的な生活の復帰のために、「①フェーズフリー(*)の考えで『いつも』を過ごそう」ということや、準備を継続する負担を考え、「②今から万全に想像しておくることは目指さず緩く想像しておき、その時が来た際には状況に向き合う気持ちのスイッチを入れることや、頑張りすぎない長距離走のような意識を持てるようにしておこう」という提言がなされました。同社は災害廃棄物対応や災害復興計画策定支援などを事業の一つとしています。池本氏は東日本大震災、能登半島地震後に現地に赴かれ、被災者の方々と直接お話をなさった経験を踏まえて、大規模災害が起こると、もう一回衛生環境を獲得することから始めざるを得ない現状、少しの段差でも高齢者の方には不便になってしまう仮設トイレの設計、被災者の方々の心の疲弊についてお話くださいました。 |
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講演4
佐藤寛華氏(お茶の水女子大学大学院博士後期課程3年)からは、台湾と日本の避難所環境の違いについてお話がありました。2024年4月3日に台湾東部にある花蓮で大地震が起きた際、地震発生からわずか3時間以内に個別形式の充実した避難所が設置された背景には、①ボランティア団体との官民連携体制、②高機能な資機材があると佐藤氏は見ています。1966年に花蓮で設立された慈善団体・慈済(ツーチー)は花蓮での発災からわずか30分後に災害支援を開始、という迅速な被災者対応を行いました。台湾では平常時から、自治体と慈善団体との役割分担ができていることがこのようなスピード感のある支援につながっているとのことでした。また、ツーチーは資機材の開発にも力を入れており、瞬時に広げることのできるベッドやパーティション、折りたたみ可能でスーツケースのように持ち運びもできるロッカーといった資機材が避難所で活用されていたとのことです。対して、2024年能登半島地震では、組み立てるのに数人がかりで10分ほどかかる段ボールベッドが配布されたり、床に個人の持ち物が散乱している状態が見られており、設置に時間のかからないベッドの導入や貴重品管理や置き引き防止対策が今後日本でも望まれるとの見解を示されました。 |
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講演5
2026年4月に日本初の「ダイバーシティ科学」大学院専攻が誕生する埼玉大学からは瀬山紀子氏(同大学ダイバーシティ推進センター/社会変革研究センターレジリエント社会研究部門准教授)が登壇し、東日本大震災・能登半島地震後の被災地におけるケア役割の比重の偏りや避難所での生活ニーズ(シャワー・トイレの数など)の男女差など、ジェンダー多様性の観点から災害対応についての問題提起ならびに提言がなされました。日本では2011年3月に起きた東日本大震災以降、男女共同参画・ジェンダー・多様性の観点から防災対策の指針が作られてきたものの、2024年1月に起きた能登半島地震においてもジェンダーの観点からの問題(避難所の炊事役割の偏りなど)が繰り返されてしまった現状を指摘されました。「誰ひとり取り残さない」社会の実現を目指すにあたり、今年11月に新設される予定の防災庁の役割は極めて重要ですが、市町村における防災会議で女性委員の数が極めて少ない現状を踏まえ、女性が参画する重要性を述べられました。瀬山氏は最後に「災害時に露呈する課題は、日常の地域の中にすでにある課題である。そのため、日常から、多様な住民が暮らす地域のなかで、ジェンダー・多様性を前提にした地域づくりを進めていくことが大切」と述べ、講演を締めくくられました。 |
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質疑応答
「質疑応答」では、防災に従事されている方々をはじめ、OCHA-SDGs学生委員会に所属する学生からも熱心な質問が寄せられ、活発な議論が行われました。 |
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閉会挨拶:相川 京子 氏 お茶の水女子大学副学長/サスティナブル社会実装機構長
相川京子氏(本学副学長/サスティナブル社会実装機構長)は、避難生活の質に着目した今回のシンポジウムの講演内容についてキーワードをあげながら締めくくり、シンポジウムは閉会しました。 |
シンポジウム閉会後に実施した参加者アンケートでは、「震災を特別ではなく、フェーズフリーの考え方で捉える、しかし、考えすぎない、という考えが印象的でした」「災害時の対応には防災も含めて女性の感性が極めて重要だと痛感しました」といった声が寄せられました。
ご参加の皆様、ご来場ならびに参加者アンケートへのご協力を誠にありがとうございました。皆様からいただいたご意見をもとに、より良いシンポジウム実現に向けて準備を進めてまいります。
【主催・共催・協力】主催 SDGs推進研究所、共催 東京ガス株式会社、協力 日本工営株式会社、埼玉大学
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150周年記念シンポジウムポスター_PDF【最終】(PDF形式 420キロバイト)
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»埼玉大学HP シンポジウム報告記事 (新しいウインドウが開き、本サイトを離れます)