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2026年8月5日更新
*所属は研究助成を行った当時のものです。
【研究目的】
2050年カーボンニュートラルの到達に向け、生活排水の処理を担う下水処理場における取組が促進されている。その一施策が太陽光発電(PV)による電力自給率の向上であり、とりわけ小規模下水処理場では下水汚泥からのバイオエネルギー回収が困難であるため、PVに対する期待が大きい。一方で、現行の下水処理場におけるエネルギー自給率は、生産される年間総電力量 (MWh/年)/処理場内における年間総電力消費量 (MWh/年) での評価に留まっており、時間帯別の電力需給バランスが考慮されていない。すなわち、PV電力と下水処理場における電力消費量の時間帯別における不一致が見過ごされている。PVは余剰電力(場内で消費しきれなかった電力の系統電力網への逆潮流)を抑制することが求められるため、時間帯別での電力需給バランスの解析が不可欠となる。そこで本研究では、小規模下水処理場を対象とした、時間帯別電力需要量推計モデル(30分解像度)を開発することを目的とする。これにより、PVとの時間帯別電力需給バランスに基づき、自給率(下水処理場の電力需要のうちPV電力により賄えた割合)ならびに消費率(PV電力のうち自家消費できた割合)に基づく評価が、日・月・年単位で可能となる。加えて、PV出力曲線(発電量の日変化)を踏まえて下水処理場の稼働スケジュールを検討することができるため、自給率と消費率を高めるための下水処理場の改修計画を提案し、その具体的な効果を示す。本研究で提案するモデルが開発されることにより、小規模下水処理場でのPV設置によるエネルギーマネジメントの普及が期待される。
【SDGs研究所の趣旨・該当するSDGs Goal関係】
SDGsの「ゴール7:すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する」に該当し、「指標7.2.1:最終エネルギー消費量に占める再生可能エネルギー比率」を高めることに貢献するための研究課題である。
図1に、本研究で提案する電力需要マネジメントの枠組みを示す。脱炭素社会の実現に向けて再生可能エネルギーが大規模に普及した地域では、電力需給の調整役がデマンドレスポンスを担うことが期待されている。担い手としての小規模下水処理場に焦点を当て、需給バランスの調整機能を有するための稼働計画を提案した。

図1 分散型電源と連結した小規模下水処理場による電力需要マネジメントの枠組み
【研究計画・方法】
本研究は、復興計画と環境計画の複合領域を扱う福島県S浄化センターを対象とした。同施設では、電力消費量のモニタリングデータ(30分解像度で使用可能)が取得されており、現状の運転実績を再現した稼働計画Aの下での電力消費量(推計値)の精度を検証することができる。30分解像度で電力消費量の比(推計値/実績値)をとり、年間を通して±10%以内に収まる時間帯が96%であることを確認した。電力消費はカテゴリーとして水処理、汚泥処理、所内電力から構成され、±10%以上の誤差が生じる時間帯は主に電力消費が小さい時間帯に発生していることから、消費の大きい水処理プロセスのブロワ稼働の再現性は高いことが確認できた。
小規模下水処理場では、多くの処理場で水処理方式にオキシデーションディッチ法(OD法)を採用している。OD法では水理学的滞留時間(HRT)を24時間以上とることから、処理量あたりの電力消費量が高い傾向にある。このことを踏まえ、本研究ではOD法での水処理(ブロワ動力)の負荷低減に向けた改修策と、電力需要をPVによる発電曲線に近づけるためブロワの高負荷運転時間帯を昼間に配置するデマンドレスポンス策を組み合わせた、稼働計画Bを設計した。具体的には、二点DO制御の導入を想定して、HRTの短縮(12時間程度、反応タンクへの酸素供給量を推計した上で設定)を反映させた。また、二点DO制御では連続曝気方式での運転が行われる。流入水に対して貯水槽を設けることを想定し、流入負荷の時間帯を制御することを通してPVの発電時間帯にブロワの高負荷運転時間を配置させた。
なお、PVの導入規模は、各稼働計画下での下水処理場の年間電力消費量(MWh/y)とPVによる年間総発電量(MWh/y)がおよそ100%となるように設置面積を設定した。
【研究結果】
シミュレーション解析に用いた稼働計画に対して、PV発電と処理場電力需要の需給バランスを推計した結果の例を図2に示す。稼働計画Bにおいて、ブロワの運転時間を短縮するとともに、高負荷運転時間帯を昼間に配置していることが把握できる。

図2 稼働計画A/Bに対する下水処理場電力需要量とPV発電量の出力結果例
電力需要マネジメントの導入が自給率・消費率に及ぼす効果について、30分解像度での電力需給バランスを年単位で積算した結果、自給率は46%(稼働計画A)から57%(稼働計画B)へ、消費率は44%(稼働計画A)から55%(稼働計画B)へと変化し、両指標とも稼働計画Bで11%の向上がみられた。月単位での評価結果においても、すべての月において稼働計画Bでの自給率、消費率が向上する結果が得られた。
【研究成果】
PVを活用した下水処理場のエネルギー自立に向けては、PVの発電出力・時間帯に電力需要を合わせる機能が求められる。加えて、電源構成に占める再生可能エネルギーの比率が高まる中、地域で産出した電力を、需給バランスを合わせることにより地域内で如何に消費するか、消費率を高めるための調整役が求められる。本研究では、調整役としての下水処理場を取り上げ、担い手となるべく求められる機能を検討した上で、同機能を有する稼働計画Bを提案した。解析対象としたPV発電時間帯への電力需要時間帯の配置に限定せず、多様な分散型電源と連携したデマンドレスポンスへと展開することが期待される。
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令和5年度 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF形式 635キロバイト)
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