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令和4年度研究助成:「乳幼児の不適切な栄養摂取がもたらす代謝異常と食の実態に関する研究」市育代先生・佐藤瑶子先生(生活科学部)

2026年8月5日更新

「乳幼児の不適切な栄養摂取がもたらす代謝異常と食の実態に関する研究」市育代先生・佐藤瑶子先生(生活科学部)

*所属は研究助成を行った当時のものです。

乳幼児は発育が最もさかんな時期であり、不適切な栄養摂取はその後の成長・発育に重大な影響を及ぼす。本研究では、乳幼児の不適切な栄養摂取に関して、以下の2つの研究を行った。まず、乳幼児の栄養摂取について、これまで重要視されていなかった脂質に関して、欠乏の観点から動物実験を行った。次に、乳幼児期には消化のよいもの、薄味のもの、食品の切り方や硬さにも配慮する必要があるが、離乳食や幼児食におけるテクスチャーや栄養素の実態は、高齢者などの嚥下食などに比べると不明な部分が多い。2つめの研究として、これまで明確にされていなかった幼児の食事において、特に食塩量の実態を明らかにすることで、幼児期における新たな食の問題を提示する。

研究①:出生時から高度不飽和脂肪酸欠乏にあるマウスの骨格筋及び脳機能の変化
食事からの摂取が必要な多価不飽和脂肪酸の中でも、炭素数と二重結合が多い高度不飽和脂肪酸は、生体膜の機能や生体の恒常性維持に重要である。乳幼児期はアラキドン酸とDHAなどの高度不飽和脂肪酸の摂取が精神発達に重要であり、特にDHAが出生時から欠乏すると脳の神経発達に異常が見られることが報告されている。我々はこれまで、脂肪酸不飽和化酵素FADS2欠損マウスに多価不飽和脂肪酸欠乏食を与えると高度不飽和脂肪酸が著しく減少することを報告している。そこで、出生時から高度不飽和脂肪酸を欠乏させたFADS2欠損マウスにおいて骨格筋や脳の機能異常が生じるかを調べた。まず、高度不飽和脂肪酸が欠乏したマウスでは、骨格筋(腓腹筋)重量が減少し、筋原線維の乱れが観察された。そして、このマウスでは骨格筋においてタンパク質の分解が亢進している可能性が示唆された。骨格筋繊維はミオシン重鎖のアイソフォームで分類できるが、高度不飽和脂肪酸欠乏マウスでは遅筋タイプのタンパク質発現が増加していることも確認できた。したがって、出生時より高度不飽和脂肪酸が欠乏したマウスでは、骨格筋の萎縮と速筋線維から遅筋線維への転換が生じている可能性が示唆された。類似の表現型が見られる病態として飢餓・グルココルチコイド投与・サルコペニアなどがあり、高度不飽和脂肪酸の欠乏はこれらの病態における骨格筋の萎縮にも影響を及ぼす可能性がある。

また、出生時から高度不飽和脂肪酸欠乏にあるFADS2欠損マウスの大脳皮質では高度不飽和脂肪酸であるアラキドン酸とDHAがともに減少していた。そして、大脳の免疫組織化学染色より、中枢神経系の免疫応答や神経発達に重要なミクログリアが肥大化し、突起が短い傾向にあることが確認できた。これらの結果より、高度不飽和脂肪酸欠乏マウスの脳ではミクログリアが活性化し、脳機能に異常が生じている可能性が示唆された。

本研究の成果より、乳幼児において脳や骨格筋機能に異常をきたさないためには、アラキドン酸やDHAなどの高度不飽和脂肪酸が欠乏しないよう食事からの摂取を推奨することの必要性が示唆された。

R4研究助成_市先生_図1

研究②:幼児期の食事の実態に関する研究
幼児期の食経験は将来の食嗜好や健全な食生活に大きく影響することが知られている。食塩摂取量の低減は我が国における重要課題であり、幼児期からの食塩摂取量の低減や適切な食塩濃度に関する味覚教育が重要であると考えられる。本研究では、中食で提供されている「お子様メニュー」からの食塩摂取量を把握し、その課題を明らかにした。

お子様メニュー(8品)及び大人向けメニュー(4品)をフードデリバリーサービスにて収集し、料理ごとに食塩量を算出した。お子様メニューは大人向けメニュー品と比較して食塩量は低かったものの、2品のお子様メニューでは食塩濃度が高かった。したがって、中食においてお子様向けニューであるにも関わらず、大人向けに比べて食塩濃度が高い料理が提供されている場合があることが明らかになった。また、本研究で測定したお子様メニューには、日本人の食事摂取基準(2020年版)に示されている8〜9歳の1日の食塩摂取量の目標量を上回るメニューもあることがわかった。

本研究の成果より、幼児において中食を利用する場合、大人よりも食塩濃度が高い料理が提供されている可能性があることを考慮して利用すべきであることがわかった。

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