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令和7年度研究助成:「次世代高容量蓄電池の実用化に向けた開発指針獲得に向けて」近藤敏啓先生(理学部化学科)

2026年7月13日更新

「次世代高容量蓄電池の実用化に向けた開発指針獲得に向けて」 近藤敏啓先生(理学部化学科)

クリーンな再生可能エネルギーを、いつでもどこでも地球上の誰もが使えるようにするというSDGsの目標7を達成するためには、高容量の正極と負極を組み合わせた高いエネルギー密度を有する蓄電池の開発が必要不可欠である。しかしながら、現行のリチウムイオン電池は正極、負極ともに理論容量の限界に近づいており、新たな高いエネルギー密度をもつ蓄電池の開発が求められている。本研究では、リチウムイオン電池の10倍以上の理論エネルギー密度を有する「リチウム空気電池」の早期実用化に向けて、課題となっている正極における反応メカニズムを解明し、課題克服のための指針を得るために、放射光X線技術によるオペランド追跡を試みた。なお、本成果は現在論文にまとめて発表する予定であることから、ここではデータは表示せず、文章のみで以下にまとめた。

これまでは、リチウム空気電池に限らず、「電池」という箱の中で起こっている電極反応については、電池を解体して電極反応前後での形態変化や生成物・反応物の解析が行われてきた。しかし、電池を解体する過程で形状が変化したり、副反応が起こる可能性を否定できず、真の電極反応については不明な点が多かった。電池の電極反応を解明し新規高機能蓄電池を開発するためには、電池を解体せずに電極反応が起こっている『その場』で電極反応を追跡・解析する「オペランド測定」が必須であるが、その手法は限られており、しかも特殊な装置や技術が必要であるため、ほとんど行われていないのが現状である。そこで我々は、放射光利用X線技術を利用して、電池を解体せずに電極反応が起こっている『その場』での電極表面形態の変化や生成物の特定を行うオペランド解析を行うことで、リチウム空気電池の実用化に向けた課題克服に取り組んでいる。

リチウム空気電池の正極反応は、放電時にリチウムイオンと還元された酸素との反応によって過酸化リチウムが析出し、充電時に過酸化リチウムが酸化溶解するという電析/溶解反応であるが(式(1))、

              2Li+   +   2e   +   O2   ⇄   Li2O2      (右向きが放電)             (1)

反応機構に2つの経路が考えられていて複雑である上に、反応経路によって反応中間体が異なることがわかっている(後者は2022年度に我々のオペランドX線回折(X-ray Diffraction; XRD)実験によって明らかになったものである(M. Aoki and T. Kondo, et al., J. Phys. Chem. C 127 (2023) 15051.)。しかしながら、上記でオペランド実験に用いたX線源は通常のX線管を利用したもので、X線の輝度が十分ではなく、データのS/N比が低い上に、厚い多孔性の正極内のどこで反応が起こっているかの特定には至らなかった。一昨年度に、SDGs推進研究所等の支援を受けて、我々はX線管の100万倍輝度が高くエネルギーも10倍以上高いシンクロトロン放射光を利用したXRD-CT(CT: computed tomography)測定法をリチウム空気電池の正極反応に適用し、放電過程において、リチウムイオンが供給される負極側からではなく酸素が供給されるガス拡散層側から正極反応が進むことを見出した(T. Kondo et al., Energy Technology 14 (2026) e202501613.)。しかしながら、上記の論文では放電過程を解明したのみであり、しかもあらかじめ適当な放電量で放電させた複数の試料を放射光施設に持ち込んでの測定結果であり、電池を解体せずに測定しているもののオペランド測定に成功したものではない。そこで本研究では、測定する試料セルを見直して再設計し、測定方法も工夫したところ、リチウム空気電池の正極反応の充電過程のオペランドXRD-CT測定に世界で初めて成功することができた。


【SDGs推進研究所 事務局より】
2026年6月10日(水)に開催したSDGs研究助成 成果報告会では、近藤先生より、次世代高容量蓄電池(リチウム空気電池)の実用化に向けた研究についてお話がありました。現在スマートフォンや電気自動車などで広く利用されているリチウムイオン電池は容量の制約などの課題がある中、大幅に高いエネルギー密度が期待される蓄電池としてリチウム空気電池が注目されています。本研究では、電池内部で生じる反応を可視化するためにX線を用いた観察手法が用いられました。実用化にはなお時間を要するものの、高効率で安全性の高い次世代電池としての可能性が示されました。

近藤先生
近藤敏啓先生

近藤先生の研究はSDGsの次のゴールに関わっています。
SDGsGoal7

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» 令和8年度 第1回 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF形式 816キロバイト)

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