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令和7年度研究助成:「植物性たんぱく質の付加価値向上を目指した大豆たんぱく質の機能性に関する研究」清水誠先生(生活科学部食物栄養学科)

2026年7月13日更新

「植物性たんぱく質の付加価値向上を目指した大豆たんぱく質の機能性に関する研究」清水誠先生(生活科学部食物栄養学科)

<研究背景>
大豆はたんぱく質が豊富な食品であり、環境負荷が低く且つ生体に有益な様々な機能性を有することが知られている。申請者はこれまで、大豆たんぱく質β-コングリシニンの摂取により抗肥満ホルモンFGF21(fibroblast growth factor21)が顕著に増加すること、転写因子ATF4がFGF21を増加させる遺伝子スイッチであること、β-コングリシニンによる抗肥満効果の多くがFGF21を介することを報告してきた。肥満を起因とする疾患や栄養恒常性の破綻は加齢性疾患に繋がること、FGF21は寿命延伸効果も報告されていることから、FGF21は健康寿命を延伸する鍵分子であり、FGF21を増加させるβ-コングリシニンは健康長寿延伸効果を有する可能性を考えた。本研究では、老齢マウスを用いた動物実験を実施し、大豆たんぱく質β-コングリシニンによる健康寿命延伸効果を検証した。

<研究成果>
本研究では、大豆たんぱく質β-コングリシニンによる健康寿命延伸効果の検証のため、老齢マウス(22カ月齢)を使用し、さらに肥満症に起因する加齢疾患を模倣するため高脂肪食を与える。β-コングリシニンの有無によるエネルギー代謝や老化の変動について詳細に検討した。

雄性C57/BL6J老齢マウス(22ヶ月齢)を3群に分け、ミルクカゼインを食餌たんぱく質源とした通常食群、ミルクカゼインをたんぱく質源とした高脂肪食(High fat diet)を与えた群(Cas群)、β-コングリシニンを食餌たんぱく質源としたHFDを与えた群(β-Con群)とし、長期間(17週間)飼育する実験を行なった。

実験期間中、1週間毎に、体重と筋力(握力)の測定を行なったが、高脂肪食を与えた2群において、有意な差は認められなかった。また、老化の主たる表現型は筋肉量・筋力の減少と認知機能の低下である。β-コングリシニンによるこれらの変動解析のため、筋力(握力)と認知機能を測定する。このことから、解剖3週間前、1週間前に認知以降テスト(新奇物体認識試験)を実施した。その結果、Cas群と比較してβ-Con群で認知機能の改善傾向が示された。認知機能解析と同時に運動量を解析した。群間での有意な差は認められなかったものの、β-Con群において運動量の増加傾向が確認された。このことから、β-コングリシニンは脳機能、運動機能を改善する可能性が示唆された。

当初は20週間程度の投与を予定していたが、老衰のため死亡したマウスが想定以上に多かったため、17週目で解剖を行なった。解剖時の体重、肝臓、脂肪組織重量(白色、褐色)の有意な変動は認められなかった。エネルギー代謝に重要な肝臓において、リアルタイムPCRによる遺伝子発現解析を実施した。老化マーカー(p15、p16、p21、LMNB1)、エネルギー代謝関連遺伝子(FGF21、ATF4など)、の発現に有意な差は認められなかった。脂質合成に関連遺伝子(SREBP-1c、FASN)においては、3群間の検定では有意差が認められなかったもの、HFDを与えた2群(Cas、β-Con)において検定を行なった結果、β-Con群において有意に発現が低下しているという結果が得られた。糖代謝関連遺伝子、脂質分解関連遺伝子の遺伝子発現に関しては、食餌による有意な差は認められなかった。白色脂肪組織、褐色脂肪組織における遺伝子発現解析を行った結果、老化マーカーやエネルギー代謝関連遺伝子の変動は認められなかったものの、FGF21はβ-Con群において発現の亢進傾向が認められた。また、脂質代謝や熱産生熱に関わる遺伝子UCP1が、β-Con群において有意な増加が認められた。

以上の結果より、大豆たんぱく質β-コングリシニンの長期摂取により、脂肪組織における脂質代謝関連遺伝子の一部遺伝子の亢進が認められた。一方、各組織における老化マーカーの変動は認められなかった。本研究は、抗肥満ホルモンFGF21やエネルギー代謝に着目したため、肝臓や脂肪組織における解析を主に実施したが、今後は他の組織解析を詳細に解明することで、食によるアンチエイジング研究の発展に繋がることが期待される。

<SDGs研究やSDGsのゴールとの関係>
世界的なたんぱく質危機が懸念される中、植物性たんぱく質は持続可能な栄養供給源として着目されている。とくに、動物性たんぱく質に依存しない食生活のデザインおよび推進は、地球環境への負荷軽減にも寄与し得る。さらに、高齢者人口の世界的な増加により、健康長寿社会の実現も喫緊の課題である。本研究の推進により、植物性たんぱく質の付加価値の向上、それに伴う植物性たんぱく質の生産・消費を広げることで、世界的な食糧問題の緩和に貢献するとともに、より多くの人々が安定的にたんぱく質を確保できる仕組みの構築を目指す。これはSDGsの「飢餓をゼロに(目標2)」「すべての人に健康と福祉を(目標3)」「気候変動に具体的な対策を(目標13)」など、複数の目標達成に貢献する取り組みである。また、本学食物栄養学科の教員である立場を活かし、「食」の機能性研究を通じた学生へのSDGs教育への貢献が期待される。


【SDGs推進研究所 事務局より】
2026年6月15日(月)に開催したSDGs研究助成 成果報告会では、 清水先生より、大豆たんぱく質の機能性に関する検証についてお話がありました。栄養価が高く、環境負荷が小さい大豆は、今後訪れるであろう世界的な「たんぱく質危機」に対応する重要な資源とされています。清水先生は、大豆たんぱく質の一種であるβ-コングリシニンの機能性に着目され、研究を進めてこられました。老齢マウスを用いた実験により、アンチエイジング効果が示唆され、大豆成分の新たな付加価値の可能性が示されました。

成果報告会2
清水誠先生

清水先生の研究はSDGsの次のゴールに関わっています。 
SDGsGoal2 SDGsGoal3 SDGsGoal13

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