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2026年7月14日更新
鼠は人間社会に対して衛生的問題、都市機能の阻害、経済的被害など、甚大な影響をもたらし、その駆除には殺鼠剤が有効である。しかし、抵抗性鼠の出現や、二次毒性による標的外生物の中毒が大きな問題であり、代替製剤の開発が急務である。その候補であるビタミンD3はビタミンD特有の毒性による二次被害が問題となり、一部の国で非常に限定的に使用されている。私たちは既存のビタミンD誘導体とは構造の異なり、高いビタミンD活性を持つ新規リトコール酸誘導体Dcha-20を創製し、本化合物が殺鼠活性を有することを見いだした。本研究では、Dcha-20の構造と機能、殺鼠剤としての応用性について検討した。
まず、ラット(Slc:Wistar/ST、7週齢)にDcha-20を絶食時単回経口投与したところ、殺鼠活性が認められた。一方、比較化合物として用いたリトコール酸(1000 mg/kg)投与群では殺鼠活性や体重減少は認められず、3位側鎖の構造の違いが殺鼠活性に大きく影響していることが示された。Dcha-20のLD50は雄雌ともに4.9 mgと算出され、ビタミンD3を凌駕し、既存の殺鼠剤と比肩する殺鼠活性を持つことがわかった。
次に、Dcha-20の体内動態を検討した結果(表1)、その半減期は、雄で17.7時間、雌で6.4時間と、ビタミンD3の半減期(3~4日)と比較すると非常に短いことがわかった。このことは、Dcha-20が、既存の殺鼠剤と比べて二次毒性を引き起こす可能性が低いことを示唆している。また、雄の方が雌よりもAUCの値が大きいことから、Dcha-20を代謝しにくく、性差があるといえる。
表1 血漿中Dcha-20の体内動態解析

*有意差あり(p<0.05)
次に、血漿中のカルシウム濃度の測定を行ったところ、100 mg/kg投与群でのみカルシウム濃度の上昇が見られた。活性型ビタミンD3の場合、1 mg/kg以下の投与でカルシウム濃度の上昇が起こるという報告と比較すると、Dcha-20のカルシウム濃度の上昇作用は極めて弱く、誤飲による危険性は低いといえる。
Dcha-20の各臓器の対する影響を精査した結果、5 mg/kg以上の投与で腎臓の水腫性膨化及び、腸管の瀰漫性膨化・透過性の亢進・盲腸内容物の減少が認められた。また、腎障害のバイオマーカーである尿素窒素、クレアチニン濃度は10mg/kg以上の用量で4〜6倍に上昇した。さらに、3 mg/kg投与後の腎臓の遺伝子発現量変動を次世代シーケンス解析で網羅的に評価したところ、Disease pathwayのDiarrheaが上位にエンリッチメントされた。本知見からDcha-20の毒性の主体は電解質バランス異常による下痢・脱水であることが示唆された。
Dcha-20の誘導体については、新たに開発したDcha-20の効率的合成法を用いて、主に3位の置換基の変換を試みた。その結果、適度な嵩高さが重要であることがわかった。
以上の結果より、Dcha-20は既存の殺鼠剤に比肩する殺鼠活性を有している一方で、生体残留性が著しく低いため、二次毒性の危険性が低く、ビタミンD3と比較して血中カルシウム濃度上昇作用が低いことから、既存の殺鼠剤の欠点を克服した、新たな殺鼠剤になると期待できる。今後は、Dcha-20の殺鼠剤としての有用性、作用機序を詳細に解析するとともに、より実用的な誘導体の開発を目指す。
【SDGs推進研究所 事務局より】
2025年6月11日(水)に開催したSDGs研究助成 成果報告会では、棚谷先生より、新規ビタミンD誘導体の殺鼠剤への応用についてご発表いただきました。高いビタミンD活性を持つ新規リトコール酸誘導体Dcha-20の構造と機能、殺鼠剤としての応用についてお話がありました。

棚谷綾先生
棚谷先生方の研究はSDGsの次の目標に関わっています。

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R7年度SDGs研究助成成果報告会(第1回)(PDF形式 1,647キロバイト)
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