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2026年7月14日更新
研究目的・背景
素粒子物理の実験で使う粒子検出器は、これまで X 線撮像素子や高感度な光センサとして医療や様々な科学計測に応用されてきた。粒子検出器の中でも、荷電粒子の飛跡を可視化することを目的としたもの(飛跡検出器)に半導体検出器があり、現在でもセンサの微細化、高速なデータ収集、放射線耐性の強化などの面で開発が行われている。半導体検出器は1980年代後半から実験で使われるようになり高性能化が進んできたが、半導体製造業者による特注品で高価ということもあり、高い性能が要求される部分に利用が限定されていた。
近年、3次元設計CAD、3Dプリンタや電子回路基板製造サービスの普及と低価格化に伴い、研究者が独自に設計した実験装置の少量製作が容易になってきた。そこで、本研究では高性能化を追求するのではなく、高度な技術を用いずにp型/n型シリコン基板を接触させることでセンサとしての機能を実現し、約1mmの位置分解能をもった飛跡検出器を開発することを目的とする。このような検出器を安価に利用できる状況になれば、放射線源や宇宙線ミューオンを利用した検出器の性能評価や教育用途等、様々な場面での利用が期待される
研究成果
長期的には、約1mmの位置分解能を持った飛跡検出器を安価な方法で作成することで大幅なコスト削減を実現し技術の普及を目指すものであるが、2024年度はシリコン基板を接触させて製作したセンサの電気的特性を評価することと、多チャンネル化に向けた読み出し回路の設計と開発を行った。
まず、n型シリコンと高抵抗p型シリコン基板を接触させてセンサを形成し、その両端に電圧を掛けたときに一方向に電流が流れやすくなる整流作用があることと、光照射に反応して電流が増加することを確認した。粒子の入射に反応してセンサとしての機能があることは確認できたが、信号強度が弱く単一粒子を検出するためには感度の向上が必要である。
センサの特性評価と並行して多数のセンサからの信号を読み出すための多チャンネル読み出し回路を設計して、部品の選定、回路を構成する個々の機能ブロックの性能を調べた。回路は、複数のパルス増幅回路、サンプル・ホールド回路及び制御回路から構成される。プロトタイプ回路を製作し、そこに疑似的なパルス信号を入力して各機能の動作を検証した。増幅回路部分は期待通り波形を整形できており、サンプル・ホールド回路部については、コンデンサからの放電時間を測定し、十分な時間電荷を保持できるようコンデンサの容量を決定した。8個の増幅回路からの信号を順次デジタル化し転送するための制御回路は100kHz程度の読み出し速度で動作するものをプログラム可能なデジタル回路(FPGA)を用いて実装した。それぞれの回路ブロックの機能を確認した後、基板を製作し同様の検証を行った。SiPMと呼ばれる、単一光子に感度のあるセンサからの信号をパルス増幅回路に入力して増幅器として十分な感度をもつことを確認できた。市販されている増幅回路は複数チャンネルを搭載したもので10万円以上する一方で、今回製作した回路は安価な部品を用いた設計になっているため1チャンネル当たり千円以下で製作できるものである。まとめと今後の課題本研究は、最先端の研究では開発された技術を安価に実現しようとするものであり、それによって高度な技術を専門家しか扱えないものにしておくのではなく、広く普及させることで研究者の裾野を広げ社会の発展に寄与する。SDGs目標9-5で謳われている研究・開発に従事する人を増やすこと、様々な分野で科学研究をすすめ、技術能力を延ばすことにつながるものである。2024年度の活動では、多チャンネル読み出し回路の開発については安価な部品を用いた設計で十分な性能をもつものを開発することができた。シリコン基板を用いたセンサの開発に関しては、光照射に対して反応することを確認できた一方、単一の荷電粒子に対しては十分な強度を得られなかった。荷電粒子が通過した際に十分な信号強度を得られない原因の理解と、信号強度を増加させる方法の検討については今後の課題である。
【SDGs推進研究所 事務局より】
2025年6月18日(水)に開催したSDGs研究助成 成果報告会では、河野先生より、実験室での利用を広く実現することを目指した安価な小型飛跡検出器の開発について、安価な部品を用いた多チャンネル読み出し基盤の実装、検出器全体の設計、開発の現状をお話しいただきました。

河野能知先
河野先生の研究はSDGsの次の目標に関わっています。

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R7年度SDGs研究助成成果報告会(第2回)(PDF形式 1,818キロバイト)
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