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令和6年度研究助成:「途上国における個別トイレ排水処理周辺土壌における病原微生物の状況調査」大瀧雅寛先生(共創工学部人間環境工学科)

2026年7月15日更新

「途上国における個別トイレ排水処理周辺土壌における病原微生物の状況調査」大瀧雅寛先生(共創工学部人間環境工学科)

背景と目的
途上国の多くの地域において水道の整備に付随して水洗トイレの普及が進んでいる一方で、下水道の整備は進んでおらず家庭毎に設置された個別し尿処理で対応している。しかし非水洗型の処理(Pit latrine)のまま水洗トイレからの排水処理をしていることから、十分な処理時間を経ずに周辺土壌へと放出浸透している状況が多くみられ、SDGs項目6「安全な水とトイレを世界中に」の目標達成の阻害となっている現状である。

本研究はスリランカ国南部のGalle地域を対象とし、個別トイレ排水処理周辺土壌中の糞便由来微生物指標を調べることで、周辺の環境水への病原リスクの拡散状況を把握し、さらに適切な処理方法やシステム管理方法を提案するための研究の一環として実施した。土壌中の糞便由来微生物指標測定には、土壌から効率的に抽出する方法の確立が重要である。これまで土壌に投入したモデルウイルスの抽出率が土壌ごとに大きくばらつく(0.1%~100%)ことが確認されており、その原因解明が必要であった。そこで本研究では土壌の含水率および水分活性に着目し、それらと抽出率との相関性を調べることした。

研究方法
スリランカ国南部Galle地域にある4か所の個別トイレ排水処理タンク(非水洗用Pit latrine2か所と水洗用Septic tank2か所)周辺土壌(タンクの外壁から距離0.2 mおよび1.0 mの地点にて深さ0.5 mの土壌を採取し、計8個の土壌サンプルとした。またドイツ製標準土壌3種を用いて抽出率と土壌特性との相関を調べることとした。

各土壌サンプルに濃度既知の大腸菌ファージMS2を投入しよく撹拌した。それら各土壌2gに対し抽出液(pH7.0リン酸緩衝液にTween20を0.1%溶解させたもの)8 mLを投入し、2分間振とう撹拌し、上澄みを微生物検出用試料とした。スリランカ土壌においては、糞便由来微生物指標として大腸菌およびPMMoV(Pepper Mild Mottle Virus)を測定した。スリランカ土壌および標準土壌においては抽出率測定用にて投入したMS2濃度を測定した。大腸菌はXM-G寒天培地によるコロニー形成法、PMMoVは定量PCRにて定量した。MS2は定量PCRおよび単離大腸菌株(NBRC3301)を用いたプラック形成法にて定量した。

結果と考察
図1にGalle地域の4か所の個別トイレ処理タンク(G1~G4)周辺の距離0.2 mと1.0 mの深さ0.5 mの土壌中のPMMoVと大腸菌の測定結果を示す。Pit latrineのG1、G2では大腸菌の検出率が高く、Septic tankのG3、G4では検出限界以下であった。このことから、水洗トイレ用のSeptic tankの方が糞便由来の微生物による汚染リスクを低減させる効果が高いことが考えられた。すなわち下水道が整備されていない地域においてSDGs項目6「安全な水とトイレを世界中に」を達成するためには水洗トイレ対応のSeptic tankの導入を進めることが非常に重要であるということが実際の測定結果から確認することができた。

一方、ウイルス指標であるPMMoVは2か所のみで検出され、それ以外は検出限界以下であった。ただしPMMoVの検出下限値が非常に高く、非検出の場所であってもウイルス除去能力が高いとは結論づけられなかった。いずれの土壌においてもウイルス抽出率が数%程度であり、この抽出率を向上させることで検出限界値が下がりウイルス指標の検出率も上がり、ウイルス除去能力の比較ができることが期待された。

R6研究助成_大瀧先生_図1

図2に土壌に投入したMS2を測定することで得られる抽出率と土壌の含水率および水分活性値との相関を示す。図2に示すとおりウイルスの抽出率と含水率おび水分活性の明確な相関は見られなかった。また標準土壌を用いた場合においても含水率、水分活性とも抽出率との相関は得られず、土壌中の水分量および結合水の割合が微生物の抽出率への関与は小さいことが示された。今後は土壌と微生物の吸着特性に関わる指標としてpHなど表面電位に関わる要因の検討を進める必要がある。

R6研究助成_大瀧先生_図2

結論
途上国のケーススタディとしてスリランカ国南部のGalle地域の4か所の個別トイレ排水処理タンク周辺土壌およびドイツ製標準土壌を用いた実験研究の結果、以下の結論が得られた。

  1. 下水道が整備されていない地域においてSDGs項目6「安全な水とトイレを世界中に」を達成するためには水洗トイレ対応のSeptic tankの導入が重要であることを実験結果から確認することができた。
  2. 土壌からのウイルス抽出率を向上させることで検出限界値を下げ、ウイルス指標の検出率を上げることでウイルス除去能力を比較することができる。
  3. 土壌中の水分量および結合水の割合が微生物の抽出率への関与は小さいことが示された。

【SDGs推進研究所 事務局より】
2025年6月25日(水)に開催したSDGs研究助成 成果報告会では、大瀧先生より、スリランカ国を対象として行われた個別トイレ排水処理周辺土壌中の糞便由来微生物指標の調査についてお話いただきました。

大瀧先生
大瀧雅寛先生

大瀧先生の研究はSDGsの次のゴールに関わっています。  
SDGsGoal6

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» R7年度SDGs研究助成成果報告会(第3回)(PDF形式 1,738キロバイト)

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