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2026年7月27日更新
世界的な人口増加のためエネルギー問題は深刻であり、CO2排出量の増加に伴う気候変動も大きな問題となっている。したがって、優れたエネルギー変換効率を有する太陽電池の開発は持続可能な社会を実現するための最重要課題の一つである。太陽電地の中でも「色素増感太陽電池」は、1) 比較的安価, 2) フレキシブル, 3) 製造が容易といった特徴から注目を集めてきた。色素増感太陽電池の変換効率は、太陽光を吸収する「色素」の性能に大きく左右され、現状ではルテニウム等の高価かつ資源に限りがある重金属からなる「無機色素」が主に活用されている (図1左)。
一方、金属を含まない「有機色素」も開発されており、例えばクマリン系色素などが知られている (図1中央)。これらは一般にベンゼンに代表される「芳香族化合物」を主骨格として設計・合成されてきた。一方本研究では、芳香族化合物と対をなす「反芳香族化合物」に着目した。反芳香族化合物は、一般に芳香族化合物と比べ狭いHOMO-LUMOギャップを有するため、可視光領域に吸収を示す。つまり、反芳香族化合物も色素増感太陽電池の有機色素として利用可能であると期待される。しかしながら、そのような研究は我々の知る限り一切報告されていない。このような背景のもと、本研究は反芳香族化合物であるペンタレン骨格をベースとした新しい有機色素の開発を目指した (図1右)。具体的には、当研究室で合成法を開発したジヨードジベンゾペンタレンを出発原料とし、その官能基化法の開発を通して新たなペンタレン色素を合成する。合成した新規ペンタレン色素の光物性を調査することで、これらが色素増感太陽電池の色素として応用可能かを探る。本研究はSDGsの17の目標のうち、「7. エネルギーをみんなに そしてクリーンに」、「9. 産業と技術革新の基盤をつくろう」、「13. 気候変動に具体的な対策を」に合致する。

図 1. 色素増感太陽電池での色素の代表例2種 (左・中央) と本研究で開発する色素 (右)
本研究では、ジヨードペンタレン1を出発原料とし、
1) ジリチオ化と続く二酸化炭素との反応によるジカルボキシペンタレン2の合成
2) 鈴木カップリングによるジアリールジベンゾペンタレン3の合成
の大きく分けて2種類の戦略で新規ペンタレン色素の合成に取組んだ。
1) ジリチオ化と続く二酸化炭素との反応によるジカルボキシペンタレン2の合成
ジヨードペンタレン1をTHF中tBuLiによりジリチオ化し、その反応溶液に二酸化炭素ガスを作用させることでジカルボキシペンタレン2の合成を検討した(スキーム1)。生成物の1H NMRにおいて、単一のペンタレン由来のシグナルが観測されたこと、赤外吸収スペクトルにおいてカルボキシ基の存在が示唆されたことから、目的のジカルボキシペンタレン2が生成したと考えている。今後、その生成を支持するための更なるデータ収集(X線結晶構造解析など)を検討したい。

Scheme 1. ジカルボキシペンタン2の合成
2) 鈴木カップリン反応によるジアリールジベンゾペンタレン3の合成
ジヨードペンタレン 1とアリールボロン酸ピナコールエステルを種々の条件下クロスカップリング反応を試みたところ、パラジウム触媒としてPd(PPh3)4を、塩基としてリン酸三カリウムを用いたとき、目的のカップリング生成物が中程度の収率で得られた(スキーム2)。カップリングさせる芳香環の種類としては、3,5-ジメトキシフェニル基に加え、立体障害が生じやすい1-ナフチル基や9-アントリル基も導入可能であった。合成した一部の分子に関しては、X線結晶構造解析によりその分子構造を明らかにすることができた。今後は、TiO2への吸着を可能とするカルボキシ基をもつ芳香環のカップリング反応も検討したい。

Scheme 2. 鈴木カップリングによる種々のジアリールペンタレン3の合成
以上、本研究では、ジヨードペンタレンを原料として新規ペンタレン色素の合成に成功した。現在、合成した各種ペンタレン色素の光物性を調査しており、これらが色素増感太陽電池の色素として有用かを検証していく。
【SDGs推進研究所 事務局より】
2024年6月12日に開催したSDGs研究助成・教育助成 成果報告会では、桑原先生より、従来の無機素材と対照的な軽量で柔軟な有機素材による太陽電池の開発において、反芳香族化合物の中でも比較的安定性あるジベンゾペンタレンの応用に着目した研究が紹介されました。

桑原拓也先生
桑原先生の研究は、SDGsの次のゴールに関わっています。

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令和6年度 第1回 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF)(PDF形式 760キロバイト)
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