HOME SDGs推進研究所とは SDGsへの取組 論文・研究成果 SDGsについて学べる授業の一例 構成メンバー お問い合わせ

ページの本文です。

令和5年度研究助成:「植物性たんぱく質の付加価値向上を目指した大豆たんぱく質の機能性に関する研究」清水誠先生(生活科学部食物栄養学科栄養生命科学)

2026年7月27日更新

「植物性たんぱく質の付加価値向上を目指した大豆たんぱく質の機能性に関する研究」清水誠先生(生活科学部食物栄養学科栄養生命科学)

たんぱく質は生体を構成する必須成分であり、その摂取不足による生体への影響は他の三大栄養素(炭水化物、脂質)より重篤である。人口増加や生活水準の向上等により2025~2030年頃にたんぱく質危機(たんぱく質の需要と供給の破綻)、2050年に食糧危機を迎えると想定されている。現代の重要なたんぱく質供給源である家畜(牛肉、豚肉など)は大量の水を消費し温室効果ガスの排出などが多いなど環境負荷が大きく、たんぱく質供給量と環境問題のミスマッチが問題となっている。大豆はたんぱく質を豊富に含み、環境負荷が低く、さらには脂質代謝改善効果など様々な機能性を有することが知られている。これまで我々は、大豆たんぱく質β-コングリシニンが抗肥満ホルモン分子FGF21の発現を顕著に増加させること、β-コングリシニンの抗肥満効果の大部分はFGF21を介することを報告した。一方、FGF21欠損マウスにおいて、いくつかの代謝パラメーターはβ-コングリシニンにより改善する実験結果を得ている。これらの背景から、網羅的な遺伝子発現解析を介してFGF21以外のβ-コングリシニンの標的分子や標的代謝経路の解明を目指した。

β-コングリシニンの新たな標的遺伝子の同定のため、β-コングリシニンを摂取させたマウスの肝臓を用いた網羅的な遺伝子発現解析を実施した。たんぱく質源としてβ-コングリシニンもしくはカゼイン(対照群)を含む食餌を9週間与え、肝臓を含む各組織を回収した。肝臓よりRNAを調製し、リアルタイムPCRを用いた遺伝子発現解析の結果、筆者らの先行研究と同様に、β-コングリシニンによる抗肥満ホルモンFGF21の発現の亢進が認められた。肝臓のRNAを用いたトランスクリプトーム解析を行った結果、多くの遺伝子がβ-コングリシニンにより増加もしくは低下する結果が得られた。β-コングリシニンにより、肝臓でどのような代謝経路が変動するかパスウェイ解析を用いて検討した。その結果、β-コングリシニンで増加する経路として絶食やアミノ酸代謝、低下する経路として脂質代謝を同定した。パスウェイ解析では、これまでにβ-コングリシニンで変動することが報告されているものが多かったため、個々の遺伝子に着目することとした。β-コングリシニンで増加が認められた上位の遺伝子はFGF21を含む多くのATF4の標的遺伝子であった。一方、β-コングリシニンで低下した遺伝子は、脂質代謝関連の遺伝子に加え、ミネラル代謝関連などの遺伝子が複数存在することを見出した。リアルタイムPCRを用いた検討の結果、複数の遺伝子がβ-コングリシニンにより有意に減少することを見出した。FGF21欠損マウスを用いた解析の結果、いくつかの遺伝子はFGF21欠損マウスではβ-コングリシニン摂取による変動が認められないことが示された。

本研究により、大豆たんぱく質β-コングリシニンの新たな標的候補因子の同定に成功した。これらの因子の機能解析を進めることにより、大豆たんぱく質の新たな機能性が解明されることが期待される。世界規模で増加する高齢者の要介護状態を防ぐため、十分なたんぱく質を摂取し、身体機能を高めることが重要である。一方、主なたんぱく質源である畜産物は大量の温室効果ガスや水を使用するため、環境面での問題が生じる。大豆は高たんぱく質食であり、かつ大量の温室効果ガスや水を必要としない。これらの点から、新たな機能性を提示し大豆を含む植物性たんぱく質の付加価値を高めることにより、SDGsの2つのゴール(「3:すべての人に健康と福祉を」、「13:気候変動に具体的な対策を」)の達成に貢献することが期待される。


【SDGs推進研究所 事務局より】
2024年6月27日に開催したSDGs研究助成・教育助成 成果報告会では、 清水先生より、緻密な遺伝子発現解析を通し、大豆たんぱく質にはβ-コングリシニンによる新たな代謝改善効果が確認され、近い将来需要と供給の破綻が懸念される蛋白質において、植物性の製品活用は重要な道であると示唆いただきました。清水先生の研究は、SDGsの次のゴールに関わっています。

SDGsGoal3 SDGsGoal13

関連ファイル / Related Files

» 令和6年度 第2回 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF形式 809キロバイト)

PDFファイルの閲覧には、Adobe Acrobat Reader DC(新しいウインドウが開き、お茶の水女子大学のサイトを離れます)が必要です。

関連リンク / Related Links

»令和6年度第2回SDGs研究助成・教育助成 成果報告会を開催しました

  •  
  • このエントリーをはてなブックマークに追加