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2026年7月27日更新
クリーンな自然エネルギーを、いつでもどこでも地球上の誰もが使えるようにするというSDGsの目標7を達成するためには、高容量の蓄電池が必要不可欠である。しかしながら、現行のリチウムイオン電池の容量は限界に達しており、新たな高容量蓄電池の開発が求められている。本研究では、リチウムイオン電池の10倍以上の理論容量を持つリチウム空気電池の早期実用化に向けて、課題となっている負極、正極、両電極の電極反応のメカニズムを解明し、課題克服のための指針を得るために、X線技術によるオペランド追跡を試みた。なお、本成果は現在論文にまとめて発表する予定であることから、ここではデータは表示せず、文章のみで以下にまとめた。
これまでは、リチウム空気電池に限らず、「電池」という箱の中で起こっている負極反応、正極反応については、電池を解体して、電極反応前後での形態変化や生成物・反応物の解析が行われてきた。しかし、電池を解体する過程で形状が変化したり、副反応が起こる可能性を否定できず、真の電極反応については不明な点が多かった。そこで本研究では、放射光利用X線技術を利用して、電池を解体せずに電極反応が起こっているその場での電極表面形態の変化や生成物の特定を行うオペランド解析を行った。
リチウム空気電池の負極反応は、放電時に金属リチウムが酸化溶解し、充電時に還元析出する簡単な溶解/析出反応であるが(式(1))、
Li+ + e- ⇄ Li (1)
リチウムはデンドライト状に析出するため、短絡による発火などの安全上の問題やデッドリチウムの形成によるサイクル特性の低さが指摘されていた。しかし、電池の内部ではリチウム負極は集電体とセパレータでサンドイッチされた状態であり、デンドライトが形成するかどうかさえわかっていなかった。本研究の放射光利用X線CTによって、負極の充放電反応が起こるリチウム負極とセパレータ界面の形態を充放電サイクル前後で比較したところ、これまで言われていたデンドライトの形成は見られず、多孔質性のリチウムが形成されることが明らかになった。この多孔質性のリチウムはサイクル数が増えるほど増加し、10サイクルほどで元々あった全てのリチウムが多孔質性のそれになってしまった。このリチウム負極の形態変化が、リチウム空気電池のサイクル特性の低さの一因であることが、本研究によって明らかとなった。
一方、リチウム空気電池の正極反応は、放電時にリチウムイオンと還元された酸素との反応によって過酸化リチウムが析出し、充電時に過酸化リチウムが酸化溶解するというこちらも析出/溶解反応であるが(式(2))、
2Li+ + 2e- + O2 ⇄ Li2O2 (2)
反応機構に2つの経路があるため複雑であり、しかも反応経路によって反応中間体が異なることがわかっている(後者は一昨年度に我々のオペランドX線回折実験によって明らかになったものである(M. Aoki and T. Kondo, et al., J. Phys. Chem. C 127, 15051 (2023).))。このような複雑な電極反応のメカニズムを解明するためには、セルを解体せずにオペランド追跡することが必要不可欠である。本研究では、放射光X線を50 µmまで絞って照射し、位置選択的にXRD測定し、正極における放電反応はセパレータ側ではなく、ガス拡散層側から進むことを明らかにした。
以上、本研究によって明らかとなった負極の形態変化や正極反応のメカニズムは、リチウム空気電池の実用化に向けた今後の開発指針に役立つものと思われる。
【SDGs推進研究所 事務局より】
2024年6月27日に開催したSDGs研究助成・教育助成 成果報告会では、近藤先生より、再エネが常時世界で利用される未来に不可欠な高容量蓄電池として、従来型10倍以上の理論容量をもつリチウムイオン空気電池を挙げ、早期実用化に必須な電極反応の仕組み解明に向け、X線技術を通し得られた知見が報告されました。近藤先生の研究は、SDGsの次のゴールに関わっています。

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令和6年度 第2回 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF形式 809キロバイト)
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