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2026年7月27日更新
2種類の植物をつなぎ合わせる「接木(つぎき)」は、農業的に非常に重要な手法であり、一般的には科が同じ近縁の植物間でのみ可能であると考えられていた。野田口(京都大学)らは、「タバコの茎を介することで、どんな植物の組み合わせでも接木ができること」を発見した(Notaguchi et al. Science, 2020)。しかしこの技術の完成と実用には、接木境界面の細胞壁が再構築され、組織再生が十分に果たされる仕組みの理解と改善が鍵となる。本研究課題では、この接木境界面における細胞壁の再構築を実質的に制御する細胞内膜交通を、代表者が構築したモデル植物のオルガネラマーカー群とイメージング技術を用いて分子・細胞レベルで解き明かし、技術の完成を目指した。
研究代表者はこれまでに植物細胞における膜交通の研究に従事してきた。膜交通は、真核生物の細胞内に存在する単膜系オルガネラ間の輸送システムで、細胞機能を維持するための重要な分子基盤である。分泌経路と液胞輸送経路は膜交通システムに制御される主要な輸送経路として知られている(図1)。例えば、細胞壁の合成酵素や細胞壁成分は分泌経路によって細胞外へと運ばれる。また大豆イソフラボンは生合成された後に配糖化・アシル化の修飾を受け、大豆イソフラボンを含む機能性分子である植物ポリフェノールは、生合成後に液胞へ運ばれ蓄積されるが、この輸送ステップに膜交通システムが関与する可能性が示唆されている。そこで、特に接木境界面における細胞壁の再構築機構に注目し、これを実質的に制御する細胞内膜交通を、研究代表者が構築したモデル植物シロイヌナズナのオルガネラマーカー群とイメージング技術を用いて分子・細胞レベルで解き明かし、農業分野でブレークスルーとなる拡張された接木技術の確立するための基盤を構築する。

まず、代表者が作出した可視化オルガネラマーカーラインを用いて、細胞壁再構築時のオルガネラ動態について観察する。対象オルガネラとして観察する小胞体(ER)及び液胞をGFP及びmRFPの蛍光タンパク質で可視化したラインは既に作出されていた。そこで、これらの植物を用いて接木実験をおこない。オルガネラ動態の観察をおこなった。その結果、茎切断後のカルス形成時に液胞膜が断片化している様子が観察された。液胞膜の断片化と接木の関係は明らかになっていないため、今後はその意義について解析していく。また、接木の長時間ライブイメージング撮影手法の検討をおこない、48時間までは連続して共焦点レーザー顕微鏡で観察できる手法を構築した(図2)

農作物への応用に向けて、トマトの液胞輸送経路に注目した研究も推進した。植物の細胞には、液胞という細胞体積の約90%を占める巨大なオルガネラが観察される。液胞は、古くは細胞体積を充填する役割をもつオルガネラと考えられていたが、近年の研究により、液胞がタンパク質や有機酸、抗酸化作用をもつ植物の二次代謝物などの貯蔵を担うことがわかってきた。液胞に蓄積される貯蔵物(イソフラボンなど)は、食品や嗜好品としての植物の栄養価、見た目、機能性などの価値を決定する重要なファクターであるが、液胞機能を利用した作物の高機能化は達成されていない。そこで、トマトで機能する液胞輸送の分子機構を解明するため、トマト形質転換体作出等の実験系を構築した。
これらの研究成果は、SDGs「飢餓をゼロ」と「気候変動に具体的な対策を」に貢献する。
【SDGs推進研究所 事務局より】
2024年6月27日に開催したSDGs研究助成・教育助成 成果報告会では、植村先生より、タバコの茎が別科植物での接木(つぎき)を叶える従来の発見を実用化させるため、必要な細胞壁再構築の仕組みを更に解明すべく、組織再生を制御する細胞内膜交通について、分子・細胞レベルで分析した過程をご説明いただきました。植村先生の研究は、SDGsの次のゴールに関わっています。

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令和6年度 第2回 SDGs研究助成 成果報告会ポスター(PDF形式 809キロバイト)
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