

今年度から始まりました第三期科学技術基本計画では、自然科学系の女性研究者を 5年間で25%にするという目標を設定しています。現在日本では文系も含めた女性研究者の割合は11.6%といわれています。自然科学に限定するとこの数字はずっと低くなると予想されます。そのような現状を鑑みますと、目標の25%を達成するにはよほどの工夫が必要です。
幸い本学では、女性科学者の育成について130 年を超える伝統があり、日本で最初の女医、荻野吟子、日本初の女性理学博士保井コノをはじめ、多くの先駆的な女性科学者を育成してまいりました。この伝統は今でも脈々と受け継がれ、卒業生が多くの機関で研究実績を挙げております。現在、本学の女性教員の割合は40%となり、自然科学系の教員数も国の目標にほぼ達しております。しかし、職種が上位になるにつれて女性教員の割合は低下しております。そこで、この現状を踏まえ、本学としては国の目標を確実に達成する一助となるべく応募させていただき、採択され、プログラムを開始いたしました。
このプログラムは、本学教員の中から、研究に最も力を発揮できる年齢にあり子育て中でもある理系の5 名を対象として、どのような環境が整えば子育て中の多様な問題を乗り越え、研究においても最大の力を発揮できるか、という課題に迫ろうという実験的な試みです。そしてさらに、他の大学や組織においても適用可能な雇用環境モデルの構築を目指しています。
このプログラムには、優秀な女性研究者を育てた経験から、あるいは自身の研究者としての体験をもとに、本学教員がメンターとして加わること、また、学外の方々にお願いしてアドバイザリー・ボードを組織し、人材育成の観点からご参加いただくことも必要だと考えております。
研究者自身は仕事を勤務時間中に能率よくこなさなければならないのは当然ですが、研究者が心置きなく定時に子どもを迎えに行けるためには、全学的な意識改革も必須です。既にマスコミでしばしば取り上げられています、いわゆる「9 時−5 時」勤務を実現するには、会議は5 時までに終わるように効率的に進行することや会議の数そのものを減らす工夫もしなくてはなりません。これについても、ワーキンググループが綿密なロードマップを作成中です。

今後ともお茶の水女子大学にどうぞ皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。