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2024年度 第1回 ジェンダード・イノベーション産学交流会報告

2024年8月8日更新

2024年度 第1回 ジェンダード・イノベーション産学交流会報告

【日時】 2024年8月2日(金曜日)16時~18時
【会場】 お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科棟604大会議室
【テーマ】 学生発表とグループディスカッション
【参加者】 17機関より38名、本学学生6名、学内関係者13名(計57名)

プログラム

司会 斎藤悦子(IGI副研究所長)
学生発表・ディスカッション進行 高丸理香(IGI特任准教授)
①16:00~16:05 開会挨拶 石井クンツ昌子(IGI研究所長/理事・副学長)
②16:05~16:10 プログラムの説明 斎藤悦子(IGI副研究所長)
③16:10~16:40 参加企業自己紹介
④16:40~17:15 「ジェンダード・イノベーション入門」受講学生によるプレゼンテーション
1 当たり前を疑う視点
2 GI視点で空気をかえる
3 興味の高さの性差と広告
4 家事男性のロールモデルを増やす
5 男女別チーム学習アプリ
6 ファッション業界のジェンダード・イノベーション
⑤17:15~17:40 グループディスカッション
⑥17:40~17:55 ディスカッション内容の全体共有
⑦17:55~18:00 まとめ

開催報告

8月2日、2024年度の第1回ジェンダード・イノベーション産学交流会が開催されました。17機関から38名の方が出席され、本学からの出席者19名を合わせた57名が会場に集まりました。今回のテーマは、本学で前期に開講した学部生対象授業「ジェンダード・イノベーション入門」の受講生6名による、ジェンダード・イノベーションのアイデアの発表と、その内容についてのグループディスカッションです。また、年度初回ということで、参加企業の代表者の方から、自己紹介を兼ねて自社の課題についてお話しいただきました。
各企業からは、従業員、管理職、役員といったレベルの女性比率についての数値目標や達成状況についての説明と合わせて、組織内の意識変革が課題であるとの声が多くありました。女性活躍の点に限らず、技術開発やサービス提供、起業支援においても、男性目線に偏っていた点をどう変えていけるかに取り組んでいる企業があり、ジェンダード・イノベーションが、変化の基軸になるという期待がもたれていることがわかりました。研究所では、この産学交流会を、こうした課題の解決の道筋を見出す場にできるよう、企画の工夫をしていく考えです。
学生発表では、6名の学部生が、それぞれが考えたジェンダード・イノベーションについてプレゼンテーションを行いました。
ひとりめは、生活科学部3年の松塚乃愛さんです。「当たり前を疑う視点」というタイトルで、社会人女性はメイクをすべきという規範があるにもかかわらず、それに要する時間が考慮されていないという問題提起です。その課題解決策として、メイクをする時間を就業時間に組み込んで、男女ともにメイクをする時間を設けることが提案されました。見込まれる効果としては、時間に余裕ができることが精神面でプラスになること、男女の隔たりを減らすことにつながること、社員同士のコミュニケーションが増えることなどが考えられるとのこと。女性はメイクをすべき、という当たり前を疑うことから生み出される、新しいコトの提案です。
ふたりめは、生活科学部2年の亀山結さんです。「GI視点で空気をかえる:二酸化炭素濃度と問題解決」という発表で、酸素運搬能力の男女差に着目し、CO2濃度の安全基準値を再検討することが提案されました。また、改善に向けたアクションとして、CO2センサーによる測定値と合わせて、性差を考慮した感じ方の違いのデータの収集をすること、空気環境を可視化することで問題意識を向上させること、ファシリティマネジメントの考え方に基づいて換気を積極導入すること、という総合的なアプローチのアイデアの提案がありました。
次の発表者である生活科学部1年の上田華楓さんは、「興味の高さの性差と広告」と題し、男女の興味の方向性の違いについての心理学の知見を活かした広告デザインの方法を提案しました。例えば、女性は他者と働くことを目標とするのに対し、男性は個人の達成感を目標にする傾向があるそうです。このことを考慮した、男性をターゲットにした保育職の求人ポスターデザインが提示されました。ポスターには保育職の男性ひとりを描いて個人にフォーカスし、「スキルをのばせる」「経験を活かす」「キャリアアップを目指せる」といった目標を言葉で強調するというものです。こうした工夫が、業界・企業の男女比の改善にもつながるのではないかという提案です。
続いて、生活科学部3年の玉井愛捺さんの発表、「家事男性のロールモデルを増やす」は、男性の家庭科教員が少ないという課題解決のための考察です。家庭科の教員免許を取れる大学に女子大が多いことは、男性の家庭科教員が少ないことの制度的な原因です。通信制大学などで男性でも家庭科教員の資格を取れる制度を拡充することとあわせて提案されたのは、家庭科を教えたいというモチベーション向上の工夫です。男性が家庭科教育の重要性を実感するのは、育休・子育て期であろうと考えられます。この時期に父親対象のSNSを利用して、家事や育児、家計管理、ゴミの問題や地域コミュニティ参加も含めた、家庭科教育のカリキュラムと同じコンテンツを発信し、教える楽しさを体験して、家庭科教員を目指すようになってもらおう、というアイデアが提示されました。
理学部1年の平田愛莉さんは、「男女別チーム学習アプリ:男女の学習行動の差に着目した学習法の提案」と題する発表を行いました。男性は競争環境で力を発揮し、女性は競争環境よりも協調環境で力を発揮するという傾向が見出されています。また、男女共学の環境では、理系は男性、女性は文系というようなバイアスが強く残っていることが見受けられます。男女別のチーム学習にすれは、バイアスの影響が軽減され、理系女性も力を発揮しやすい可能性があります。こうした学習行動の性差に関する知見に基づき、男女別のグループ分けを前提としたチーム学習アプリの利用は効果的なのではないかという提案がなされました。
最後の発表者である理学部1年の渡辺百合子さんは、「ファッション業界のジェンダード・イノベーション」について考えました。女性用の靴はサイズが大きくなるとデザインのバリエーションが減り、平均的なサイズよりも足が大きい女性は、ファッションを十分に楽しめていないということがあります。また、女性が履く、時にはそれを履くことが規範とされる、ハイヒールやパンプスは、足の健康を損なう可能性があります。そこで、サイズ、デザインの両面で、男性用と女性用をボーダーレスにすることが提案されました。ファッションのボーダーレス化は、体の大きさに適した靴や服の選択肢が増え、多様なファッションに挑戦しやすくなるという即時的効果が期待できます。また、長期的には、性別固定ファッションによる不利益からの解放が期待されます。とはいえ、商業的な成功が伴うかどうかは課題であろうということも述べられました。
発表の後は、6つのグループに分かれ、それぞれの発表内容についてのディスカッションが行われました。各グループのファシリテーターは発表した学生が務め、あらかじめ用意していた、企業の方々から意見を伺いたいポイントに沿って議論しました。ディスカッションの時間は25分間でしたが、どのグループも、その間話が途切れることなく、活発な意見交換がされていました。それぞれのグループでのディスカッション内容の発表では、アイデアを社会実装する際に考えられる課題や、性差に配慮することがかえってステレオタイプに当てはめてしまうことにつながる可能性、SNSや広告については炎上のリスクが伴うことなどへの言及がありました。企業の方々からの様々なご指摘やアドバイスをいただき、参加した学生にとって、貴重な学びの機会となりました。
産学交流会での学生プレゼンテーションの企画は今回で3回目でしたが、グループディスカッションを組み込む形は初めての試みでした。今後の企画にも、参加者同士が活発に交流し、自由な議論ができる工夫をしていく考えです。

所長挨拶会場風景
石井クンツ昌子所長挨拶

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