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イベントレポート 特別講義「中村勘九郎×お茶大生」

2021年3月8日更新

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中村勘九郎さん
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学内の会議室からオンラインでお話いただきました

 2020年11月5日(木)、歌舞伎俳優の中村勘九郎さんにご来校いただき、大学生・大学院生40名を対象とした特別講義を開催しました。コロナ対策のためにオンラインによる開催となりましたが、勘九郎さんのあたたかなお人柄によって親密な空間となりました。
 学生たちから寄せられた多様な質問に対して、豊富な経験に基づき実に丁寧にお答えいただきました。勘九郎さんの芸に対する真摯な取り組みを目の当たりとし、学生たちは様々な気付きを得たようです。
 ここでは、受講者3名によるイベントレポートをご紹介します。


 2020年11月5日に「伝統芸能×未来」プロジェクトの一環として開催された中村勘九郎さんの特別講義に参加させていただきました。私の歌舞伎の鑑賞経験はこれまで数回ほどで知識は初心者程度なのですが、歌舞伎とその衣裳や扮装について造詣を深めていきたいと考え受講を希望しました。
 講義開催に先立って勉強会があり、参加の学生はそれぞれの研究分野の視点から受講に臨もうとしていることが伺えました。私自身は中村勘九郎さんの様々な分野でのご活躍を日常的に拝見していたこともあり、開始前には「お聞きしたい事をしっかり質問できるだろうか」と、オンライン配信ながら内心緊張していたことを覚えています。しかし実際に勘九郎さんがZoomにご登場されると、画面越しの学生達に対してこまめに声をかけてくださるようなお気遣いもあり、和やかな雰囲気で講義はスタートしたのでした。
 私は今まで「歌舞伎」という芸能は、日本を代表する古典芸能の一つという認識を持っていました。けれども勘九郎さんのお話を拝聴し、歌舞伎の舞台に立つ方々は常に現代社会との関りを意識されながら活動をされていると理解できました。また、緊急事態宣言期間中にはご子息の勘太郎さん・長三郎さんとお稽古をされていたというエピソードが強く印象に残っています。人に教えることで自分も成長することができると語られ、舞台に立てない時も「心だけは腐らないように」努めていらしたというお話に感銘を受けました。
 最後に私は日本服飾史を専攻していることから、これまで役を演じる際に身に付けられた衣裳の中でも特に印象に残るものがあれば教えていただきたい、という質問をさせていただきました。勘九郎さんはその回答の一つとして「仮名手本忠臣蔵」を挙げられ、役の個性と衣裳の関係や、染色で衣裳のイメージ通りの色を出す難しさなどを丁寧にご説明くださりました。様々な分野で多様な衣裳をまとってこられた勘九郎さんに、衣裳に対する考えを直接伺えたことは私にとって大きな刺激となりました。
 2020年度はコロナ禍という状況下で何かと歯がゆい場面もある学生生活を送りましたが、今回の講義で勘九郎さんの温かく前向きなお話をお聞きできたことは、今後の励みにつながるありがたい経験になったと言えます。

比較社会文化学専攻 生活文化学コース 博士前期課程1年 伊藤愛美


 今回、勘九郎さんには、私の専攻分野と結びつけた「家族や子育て」についてのご質問をさせていただきました。プライベートな部分に迫る質問なのにも関わらず、父の故勘三郎さんや弟七之助さんとの“親子”“兄弟”として演技と向き合う際の視点の違い、妻の前田愛さんや息子の勘太郎さん・長三郎さんとの関わりの中で生まれる新しい物事の価値観など、勘九郎さん自身がお持ちになっている哲学や歌舞伎に対する真摯な姿勢をとてもとても丁寧にお答え下さり、非常に勉強になりました。常に謙虚な心を忘れず、自分の業に磨きをかける勘九郎さんに、尊敬の念を抱くばかりです。
 この特別講義に参加する以前から、中村屋や歌舞伎についてのドキュメンタリーやインタビュー番組などを見ることが好きだったのですが、今回の講義を通して、また更に歌舞伎に対しての興味や関心が深まりました。俳優さん方それぞれの「家族や一座に対する捉え方(舞台に上がるまでにかけられた想い)から歌舞伎を鑑賞する」という新たな視点が自分の中に生まれたように思います。
 また、最後に勘九郎さんから「子どもって不思議ですよね。誰に何も教わっていないのに、きちんと喜怒哀楽の感情がある。これってどうしてなんだろう」と宿題を頂きました。このことは、今後「家族」「子ども」を研究していく上で大きなテーマとなりました。私は、感情と結びついている子どもたちの表現行為や感性を磨く教育的アプローチに関して学びを深めていきたいと考えているので、この“喜怒哀楽そのものに根本的に立ち返る”という方法は斬新かつ大きな気づきでした。特別講義後の子ども学の授業では、早速子どもの喜怒哀楽に重点を置いた観察や考察を行い、少しずつですが自身の教育観を形成できつつあります。今後も、勘九郎さんに教えていただいたことを糧とし、一生懸命勉学に励んで参ります。

 文教育学部 人間社会科学科 子ども学コース2年 須藤晶子


 ——熱量。
 特別講義を通じて、私が受けた衝撃を言葉にするならば、この二文字です。そして、この“熱量”が私の中の“歌舞伎”を大きく変えました。
 始めに、今回の特別講義に参加したいと思った背景を簡単にお話したいと思います。私が初めて歌舞伎を観たのは、高校生の頃でした。それまでのイメージに反して、独特な台詞回しであっても内容をつかむことができ、その展開や話の親しみやすさに惹き込まれていったのを覚えています。そして今年度、大学で歌舞伎の講義を受け、高校生の頃にはなかった知識を身に付けていきながら、歌舞伎への関心は高まっていきました。その中で、今回の特別講義があることを知り、歌舞伎役者さんが語る歌舞伎を伺える、またとない企画だと思い参加を希望するに至ったのです。
 こうして迎えた講義当日。緊張と好奇心と、これから始まる時間に胸を躍らせながら開始時刻を待っていました。そして、いざ開会。勘九郎さんからのお話は、歌舞伎に対する想いや考えを始め、歌舞伎以外のお仕事のお話、そして、昨今のコロナ禍における活動についてなど、幅広く、深いものばかりで、終始前のめりに伺っていました。後半の質問時間では、学生からの質問に対して回答するだけでなく、そこから話題を広げるようにお話してくださり、自然と話しやすい雰囲気になっていたのを覚えています。最後には、「You Tubeでどのように歌舞伎を発信していくか」ということについて、学生のアイディアを募るという時間もあり、発信する側として歌舞伎の内側に関わっていく貴重な経験となりました。
 密度の濃いお話ばかりで、講義の時間はあっという間に過ぎていました。しかし、終了後もなお、勘九郎さんのお話から受けた“熱量”は、私の中に残り続けていたのです。中でも、コロナ禍において、演じられるということのありがたさや喜びを再認識したというお話では、勘九郎さんが歌舞伎に対してもっているこだわりが窺え、本当に歌舞伎を愛されているのが伝わってきました。また、歌舞伎を観るということについて、次のようにおっしゃっていたのも印象的です。
 「とにかく生で観てほしい。」
 この言葉には、歌舞伎が“生きた芸能”であることが表れているように思います。勘九郎さんは、この言葉に加えて「歌舞伎は、お客さんと対話するように、その場の空気感に合わせて演じ方が変わってくる」というお話もしてくださいました。
 ——歌舞伎役者さんがいて、お客さんがいて、その空間全体で歌舞伎は完成する。
 私の中で“観る芸能”であった歌舞伎が、その場の空間全体で作り上げられる“生きた芸能”に変わった瞬間でした。
 「ノアの方舟があったら、見捨てられるのは自分たち(芸能)。」
 講義中に勘九郎さんがおっしゃったこの言葉は忘れられません。私は、この言葉を受けて、歌舞伎は日本を代表する伝統芸能であり、それを後世まで伝えていくのは重要なことなのだと、漠然と思っていたのではないか、“伝統を守る”という言葉だけが先行してはいないかと、問い直すきっかけになりました。そして今回、勘九郎さんとの対談を通じて、伝統芸能を伝えている方の“生の声”を聞き、その“熱量”を肌で感じることで、歌舞伎が“生きた芸能”であるということ、だからこそ後世に伝え守っていくべきなのだと、しっかりと頭で理解することができました。伝統芸能を“未来へつなぐ”には、私たちが心から“つないでいきたい”と思うこと、そのためにまずは“知る”ことが必要です。私は、この対談でまさにその“知る”機会をいただいたのだと思いました。歌舞伎をはじめ、日本には多くの伝統芸能があります。これからは、それらを“知る”こと、そして“未来へつなぐ”ことを、意識していきたいです。

文教育学部 言語文化学科 日本語・日本文学コース3年 匿名

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