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イベントレポート 講演会「UCLAにおける日本演劇講義録――パンデミック、人種、ジェンダー問題に向き合いながら」(Japanese/English)

2022年2月17日更新

You can find the English version at the bottom of this page.

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オンライン配信をおこないました

2021年10月23日(土)、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の嶋崎聡子先生を講師にお迎えし、講演会「UCLAにおける日本演劇講義録――パンデミック、人種、ジェンダー問題に向き合いながら」をオンライン配信で開催しました。本学グローバルリーダーシップ研究所比較日本学教育研究部門との共催で、参加者は約90名。本学学生をはじめとする若い世代はもとより、留学経験者や教育現場に関わる方など、様々な方にご参加いただきました。

アメリカ国内はもとより世界中から学生が集まるUCLAにおいて、日本演劇はどのように講義され、学生達はそこから何を学び考えるのか――海外の若者たちの日本演劇をめぐる知的交流の様相を知ることを企図したもので、昨年開催した対談「歌舞伎の国際化をめぐって」に続いて、伝統芸能の国際交流をテーマにしたイベントです。

その内容は、UCLAが実践する多様な若者に開かれた教育、その中における日本演劇講義「Performing Japan」の取り組み、BLM運動・ジェンダーといった社会の課題との向き合い方、そしてパンデミックにおける最先端の教育実践方法など、伝統芸能をはじめ日本演劇を軸に実に多岐にわたりました。そのスケールの大きさに圧倒され、あっという間の90分となりました。

特に印象的だったのは、UCLAにおいては日本演劇の授業が、階級や人種と言った今日的な社会問題と、様々な点で深く結びついて展開していることです。日本において伝統芸能は「日本人としての教養」であることを教員と学生は無意識に共有しており、ともすれば、その先の意義やターゲットを意識することはありません。しかし昨今、伝統芸能に対する根本的な知識や価値基準はもはや共通のものではなくなりつつあり、そうした意識を見直すことが必要でしょう。様々な課題と向き合いながら、ポジティブなエネルギーに溢れた嶋崎先生のお話から、伝統芸能と教育のあり方を考えてゆくための多くの手がかりをいただけたように思います。

ここでは本学からの受講者3名によるイベントレポートをご紹介します。なお、当イベントの講演録(全文)を、『比較日本学教育研究部門 研究年報』18号(お茶の水女子大学グローバルリーダーシップ研究所比較日本学教育研究部門、2022年3月)に掲載予定です。


執筆者の所属・学年は開催当時

 「UCLAにおける日本演劇講義録――パンデミック、人種、ジェンダー問題に向き合いながら」の講演会では、アメリカの大学生にとっての日本、そして日本文化を、嶋崎先生を通して垣間見えました。私自身は、オーストラリア出身の留学生として母国で小・中・高校を経験してから、日本の大学に入学し、日本の教育も経験させていただいています。そのため、自分の経験を重ね合わせながら、講演を聞くことができ、色々な興味深い発見がありました。
 例えば、嶋崎先生がクリティカル・シンキングを育てるために、積極的にディスカッションを取り入れたり、学生たちに何かを創らせたりする方針を取っているようです。私の中・高校の国語の授業にもディスカッションが多く、先生がテーマや方向を少し促す、または導入する役割しか果たさなかった記憶があります。それによって、学生同士で意見やアイディアをぶつけることができましたし、お互いのアイディアを深掘りしたり、展開したりすることもよくありました。つまり、学生が批評的に考えられるようになり、自らアウトプットすることにも慣れると思います。中学一年生の時から大学受験まで、短編小説や詩といった創作作文が必ず求められ、試験の一部になっていました。嶋崎先生も学生たちをクリエイティブに考えさせ、楽しくてクリエイティブにものを創るように促された印象を受けました。このように創造力を果たせる機会があると、考えることが楽しくなりますし、ディスカッションや議論をする時には、新鮮で新たな観点にも気づけます。
 日本では、ディスカッションを中心とした授業や学生の積極的な発言がまだ少ないように思います。話し合いがあったとしても、お互いの考えていることを深く追求しない傾向もあるでしょう。「そうですね」や「へぇ」で終わらせるのではなく、「なんで?」と聞いたり、自分の体験や視点を持ってくることは非常に大事だと私は思います。

文教育学部言語文化学科2年 パターソンラジャク・サーシャ


 「UCLA における日本演劇講義録 ――パンデミック、人種、ジェンダー問題に向き合いながら」というテーマにおいて、現在カリフォルニア大学ロサンゼルス校 (UCLA)にて日本演劇の研究をされている嶋崎聡子先生のご講演を拝聴しました。はじめに、先生が教鞭 を執っていらっしゃる UCLAについてお話をいただきました。アメリカ大学における UCLAの立ち位置として、人種や所得層といった様々な点で多様な学生が集う特異な教育機関であると分かり、非常に国際的で刺激的な場だと感じました。しかし、コロナ禍におけるオンライン授業の導入によって、学生一人ひとりの生活環境や経済的な事情が浮き彫りとなる実情もありました。そんな異例の状況下で、嶋崎先生は日本演劇の授業の意義とは何か、どのように行っていくべきかを模索されていました。特に印象に残ったのが、学生一人ひとりのアイデンティティや価値観から生まれる意見をもとにディスカッションを行うという授業形式です。日本演劇の講義において日本に根付いている思想や宗教観といった分野に対する理解は不可欠ですが、それを踏まえ改めて学生自身の課題として考えることで、より広い視野における意見交換が可能になります。日本文化という枠組みの中で考えるだけでなく、多様な文化的視点から考察することで見えてくる日本演劇の姿があり、UCLA という環境だからこそできる授業だと感じました。更に、題材も非常に興味深く、世阿弥の『風姿花伝』といった古典的なものから、昨今のヴァーチャルテクノロジーに言及した題材まで、時代やジャンルを問わず柔軟に取り入れた講義内容が興味深く、私自身も受講してみたいと感じました。
 また、Zoom 講義において先生が工夫されていることや、オンラインならではの利点についてもお話いただきました。チャット機能を活用し、あえて教員が立ち入らない議論の場を設けることで、従来の教員と生徒の関係を再構築し、今まで聞こえにくかった生徒一人ひとりの声が明瞭になったと仰っていました。オンライン授業の導入によってもたらされた教育の現場の変化は「同じ空間を共有できない」というデメリットで語られることが多く、私も実際に不便さを感じていました。しかし今回、教員である先生のお立場からのお話をお聞きし、オンライン授業の弊害を語るだけでなく、利点を活かして新たな可能性を模索することが重要であると感じました。
 そして最後に、コロナ禍における雇用問題が大学や研究の場にも影響を及ぼしていることに言及されていました。男女共同参画社会の実現が提唱されている現在ですが、今回のパンデミックによって、子育てをしながら働く女性研究者が研究を続けていくことが困難となるケースが見受けられます。教員のジェンダーバランスが不均衡となることは、大学という学問を追究する場の可能性が狭まることを意味します。女性であり、大学院生である私自身にとっても身近な問題として感じられました。この度は、貴重なお話を伺う機会に参加させていただけたことに感謝申し上げます。コロナ禍の現在、そしてアフターコロナの世界において大学はどのように在るべきか、学生である我々も考えていかなければならないと感じました。

 比較社会文化学専攻博士前期課程1年 平石奈都子


 「伝統芸能×未来」プロジェクトの一環として開催された、嶋崎聡子先生の講演会「UCLAにおける日本演劇講義録――パンデミック、人種、ジェンダー問題に向き合いながら」に参加させていただきました。
 UCLAという場所や、アメリカにおける進路選択と所得格差の関連性についてのお話を皮切りに、パンデミックと教育・環境格差、昨年度嶋崎先生が行った講義についてのお話、Black Lives Matter(BLM)運動などの構造的人種差別問題とご自身の講義について、ジェンダー問題……と、多岐に渡る貴重なお話を伺うことができました。
 嶋崎先生が2020年に行ったUCLAでの講義は、日本の文化や意識・役者の身体・パフォーマンスについて今昔を通して触れるとともに、オンライン上での疑似コミュニティを通じたディスカッションによって、さまざまな国・地域・人種の価値観や文化についても触れる、というものであると感じました。この、演劇と日常を関連させたディスカッションというのは、演劇という「日常に起こりうる出来事を切り取り、発展させて〈物語〉として昇華させたもの」を、「演劇について考える」授業を通して各々の日常に、いわば逆輸入するという構図になっているように感じました。
 また、嶋崎先生が何気なくおっしゃっていた、UCLAでの講義において生徒がどのような代名詞で呼んでほしいと考えているのかを答えてもらった、というお話が印象に残りました。このお話を聞いた瞬間は「わざわざそんなことをするのか、すごいな」と思いました。しかしその後すぐ、「相手を意図せず傷つけないために、相手が自身のあり方についてどのような価値観を持っているのか知る・知ろうとする姿勢」を、「わざわざ」「そんなこと」と捉えている自分の浅はかさ・ジェンダー問題への「鈍さ」を自覚しました。この姿勢を軽んじることは、「自分のあり方について自覚し表明すること」で生まれる多様性も、多様性のある社会の中で生きているはずの自他をも軽んじていると言えると感じ、猛省しました。
 この講義を通じて、演劇と日常というのは決して分断されたものではなく、双方向的に関連しあっているのだろうと感じられました。また、自分自身の潜在的な考えや「鈍さ」を自覚し、反省することができた講演会でした。 
 末筆ながら、このような貴重な機会を設けてくださった嶋崎聡子先生と、「伝統芸能×未来」プロジェクト関係者の皆様に御礼申し上げます。

文教育学部言語文化学科2年 吉野早穂子

Event Report 
Lecture
“A Transcript of Lectures on Japanese Theater in UCLA : Facing Issues of the Pandemic, Races and Genders”

Saturday, October 23, Lecture “A Transcript of Lectures on Japanese Theater in UCLA : Facing Issues of the Pandemic, Races and Genders” was held and streamed online with Professor Shimazaki Satoko from University of California, Los Angeles (UCLA) as our guest. It was organized jointly with the Center for Comparative Japanese Studies of the Institute for Global Leadership of Ochanomizu University, and about 90 participants attended the event including younger generations such as students from our university as well as various participants having an experience of studying abroad or relating with the field of education.

This lecture, with international exchanges of traditional performing arts as its theme, was a sequel of the Dialogue “In Regard to the Globalization of Kabuki” held last year, and tried to figure out the intellectual interchange conditions of oversea young people on Japanese theater, for example, in UCLA, a university with students from both within and outside the United States, how the Japanese theater was interpreted in lectures as well as what did students learn and think from it.

The contents included many aspects with Japanese theater such as traditional performing arts etc. as the center. For instance, activities of the Japanese theater lecture “Performing Japan”, ways to confront social issues such as BLM movement and gender, as well as the most advanced educational practicing methods during the pandemic etc. in the education practiced in UCLA that opened to diverse young people. The scale of the lecture was so huge that 90 minutes turned out to be a blink of time. 

The most impressive thing was that, in UCLA, Japanese theater classes are developed with deep involvement of various points of contemporary social issues such as social classes and races etc. .In Japan, traditional performing arts are shared unconsciously by both teachers and students as the “attainment or accomplishment for Japanese people”, and are rarely thought about the further meaning or target in classes. However, in recent years, the basic knowledge and value standards for traditional performing arts are not shared anymore. Facing various issues with positive energy, Professor Shimazaki gave us many hints about thinking the desirable situations of traditional performing arts and education.

Here, we would like to share event reports from three participants attended from our university.Besides, the full lecture record is scheduled to be published inComparative Japanese Studies Annual Bulletin vol. 18 (Center for Comparative Japanese Studies of the Institute for Global Leadership of Ochanomizu University, Mar. 2022).


The assigned positions and grades of the writers were then positions and grades.

In the event “A Transcript of Lectures on Japanese Theater in UCLA : Facing Issues of the Pandemic, Races and Genders”, I learned about both Japan and Japanese culture for American students through Professor Shimazaki’s lecture. I myself am a foreign student from Australia in a Japan university, spending my elementary school as well as junior and senior high school in my home country, and I also experienced the Japanese education. Therefore, I could listen to the lecture while comparing with my own experience, and I found a lot of interesting points.
For example, Professor Shimazaki said that to cultivate creative thinking, the policy is to introduce discussions positively and let students to create something. I remember that in my junior and senior high school, there were also many discussions in language arts classes, and our teachers only tried to push our theme or direction a little bit, or only played as a introducing role. Thus, students could exchange their opinions and ideas with deep-digging or developing their ideas. In brief, students were able to become thinking critically as well as be used to output themselves. From the first grade in junior high school until university entrance exams, creative writings such as short stories and poems were definitely required and became a part of exams. I got the expression that Professor Shimazaki also made students to think creatively and stimulated them to create delightfully. Like this, if there are chances for students to exert their creativities, it would be more interesting to think and when they discuss or argue, they could notice fresh and new viewpoints.
In Japan, I think that there are not many classes with a focus on discussion or students speaking positively yet. Even if students talk with each other, they properly would not dig thoughts of other students deeply. I think it is very important to ask why and have your own experience or viewpoint instead of only finish your class just agreeing or echoing to opinions from others.

Faculty of Letters and Education, Department of Languages and Culture,
Sophomore, Patterson Rajak Sasha Bindu


In the theme of “A Transcript of Lectures on Japanese Theater in UCLA : Facing Issues of the Pandemic, Races and Genders”, I listened to the lecture of Ms. Shimazaki, a professor of Japanese theater in University of California, Los Angeles (UCLA) now. At first, Professor Shimazaki told us a lot about UCLA where she is teaching now. I got to know that as the position of UCLA among American universities, it is a very special educational institution with diverse students from different races and income brackets, which made me realize that it is a very extraordinarily global and exciting place. However, through the introduction of online lessons during the pandemic, the living environment and financial situation of each student became visible. Under these unusual situations, Professor Shimazaki tried hard to find out what is the meaning of Japanese theater lectures and how to let them make sense. The most impressive thing for me was the lecture style to discuss basing on identities and sense of values from each student.In Japanese theater lectures, the understanding of fields such as thoughts and religious ideas which had established in Japan for a long time is essential. By letting students think about as their own subjects based on the understanding again, it is possible to exchange their opinions in a broader field of view.They try to consider Japanese theater both in the frame of Japanese culture and form the diverse cultural view points. I think it’s a lecture that could only be held in the environment of UCLA. Furthermore, the subjects are also very interesting, including from traditional themes such as Fūshikaden written by Zeami Motokiyo to contemporary themes such as virtual technology. The contents of lectures which contained various periods and genres are also very interesting, making me want to listen to the lectures myself.
Meanwhile, Professor Shimazaki told us about what she had tried to let the Zoom lectures make sense and the unique advantages of online classes. By using chat functions and setting a discussion place for students without teachers, the relationship between teachers and students was reconstructed and the voice of each student which was difficult to hear before could be heard clearly now. Changes in education scenes brought by the introduction of online lectures are often told that they have disadvantages because they could not share the same space among participants. Actually, I feel the same way. However, after listening to the lecture of Professo Shimazaki from the standpoint as a teacher, I think it is important for us to seek for new possibilities using advantages of online lectures rather than just talking about disadvantages of them.
At last, Professor Shimazaki told us that employment issues during the pandemic also affected universities and research institutions. Nowadays, though the realization of gender-equal society is advocated, during this pandemic, it is difficult for many female researchers to continue their researches while raising their children. The lack of gender-balance among teachers means that the possibility of universities as a place for pursuing knowledge is narrowed. As a girl and postgraduate student, I feel it is also a familiar problem to myself. I appreciated the opportunity to participate the valuable event. Thank you very much. I think we students should also consider what universities should be during the pandemic right now and in the world after the pandemic in the future.

 Graduate Division of Comparative Studies of Societies and Culture,
 First Year of Master’s Program, Natsuko Hiraishi


I participated the event “A Transcript of Lectures on Japanese Theater in UCLA : Facing Issues of the Pandemic, Races and Genders”, a lecture by Professor Shimazaki Satoko and also a part of “Traditional Performing Arts X Future” project.
In this lecture, Professor Shimazaki told us many valuable episodes including various aspects  such as what is UCLA, the relevance between course selection and income gaps in the United States, the pandemic and gaps of both education and environment, lectures that Professor Shimazaki held last year, racial discrimination issues such as Black Lives Matter (BLM) movement and her lectures as well as gender issues.
I think, lectures that Professor Shimazaki held in 2020 touched on Japanese culture and consciousness as well as physical body and performance of actors/actresses in all times, meanwhile, the lectures also touched on value sense and cultures of various countries, regions and races through discussions of online virtual communities. I think these discussions, which related theatrical play and daily life, re-imported theatrical play, which cut off incidents that could happen in daily life then sublimated them into “stories”, into everyone’s daily life through lectures for thinking about theatrical play.
I was also impressed that Professor Shimazaki told us unintentionally about she asked students to answer the question that which pronoun they would like to use to call themselves. When I heard this, I thought immediately like it’s cool to ask that question on purpose. However, shortly after that, I learned that the purpose to ask that question is to show the attitude to try to know the value sense that others thought about themselves in order to protect others from hurt without intention. I was ashamed of my shallow thought and dullness to gender issues. I think that ignore this attitude means ignore diversity which appeared from realizing and expressing one’s own situation as well as ignore oneself and others who are living in a society with diversity, thus I reflected on myself seriously.
Through this lecture, I feel that theatrical play and daily life are not separated things, they are related interactively. Furthermore, it was also a lecture that made me to realize and reflect on my potential thoughts and dullness. 
Last but not least, I would like to thank Professor Shimazaki to offer such a valuable opportunity for us and the staff of “Traditional Performing Arts X Future” project.

Faculty of Letters and Education, Department of Languages and Culture, Sophomore,
Sahoko Yoshino

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