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イベントレポート「Kidsプログラム2021 inお茶小」

2022年3月1日更新

【概要】
日時 11月11日(木)
対象 お茶の水女子大学附属小学校 児童(1年生105名)
講師 近藤真理子(藤浪小道具)
片倉唯(藤浪小道具)
岡田博元(お茶の水女子大学附属小学校)
栗原知子(お茶の水女子大学附属小学校)
小沼律子(お茶の水女子大学附属小学校)
武関真衣(武蔵野美術大学大学院)
向田瑞貴(お茶の水女子大学大学院)
共催 「伝統芸能×未来」プロジェクト(JPAF)
お茶の水女子大学附属小学校
協力 株式会社藤浪小道具
  • 藤浪小道具の近藤真理子さんによる小道具レクチャー

    藤浪小道具の近藤真理子さんによる小道具レクチャー

  • 先生熱演のイノシシに子ども達は大喜び

    先生熱演のイノシシに子ども達は大喜び

  • 竹籠に小豆を流すと波音が聞こえます

    竹籠に小豆を流すと波音が聞こえます

  • 小道具作りに挑戦。見本となる蝶々のレクチャーです

    小道具作りに挑戦。見本となる蝶々のレクチャーです
     

「伝統芸能×未来プロジェクト」では、様々な分野の第一線でご活躍の方々を講師にお迎えし、大学生と大学院生を主な対象として多彩なイベントを開催してきました。そしてこの度、より若い世代にその魅力を広めるべくKidsプログラムを立ち上げ、附属小学校1年生を対象としたイベントを開催しました。テーマは「かぶきにふれよう!」。子どもたちが親しみやすい「モノ」を通じて、歌舞伎と出会い、親しむ場を作ろうというねらいです。お茶の水女子大学附属小学校との共催で、明治五年の創業以来長年にわたり演劇・映像の現場を支えてこられた藤浪小道具にご協力いただきました。

歌舞伎の上演には多様な小道具が使われますが、それらは好奇心を刺激するものばかりです。まずは、「仮名手本忠臣蔵」五段目を学びながら、この場に使われる笠、蓑、小判、火縄銃といった色々な小道具に触れてみました。子ども達は、先生迫真のイノシシの軽やかな動きに喜び、赤く滴る血糊にびっくり仰天。一番人気は何といっても日本刀で、本物そっくりのそれを振るってみたら気分はすっかり人気マンガの主人公です。
続いては音響効果の小道具を使う「効果音ラボ」。貝の表面をこすりあわせると蛙が「ゲコゲコ」と鳴き、長い竹籠に小豆を流すと波が打ち寄せ、ビーズが付いた団扇を仰ぐと雨が降ります。身の回りにある素材を工夫することで、自然の音を豊かに表現できることに気がついた様子です。
最後は「小道具ワークショップ」。自分たちで小道具作りに挑戦です。折り紙で蝶々を作って長い竹ひごの先に付けると、不思議なことにフワフワと軽やかに羽ばたきます。友達の肩や頭にとめてみたり、教室中に色鮮やかな蝶々が飛びかいました。

小道具に触れる子ども達の好奇心旺盛な楽しそうな姿からは、歌舞伎が持つ原始的な表現の魅力を再発見できたように思います。プログラム終了後には、児童や保護者から「歌舞伎の本を読んだ」「家族と劇場に行く計画を立てた」等の嬉しい反響も寄せられました。今回のプログラムが、子どもたちの豊かな感性を刺激するとともに、技術や文化の伝承を考えるきっかけになればと願っています。

Kidsプログラムの実施にあたっては、講師の皆さま、小学校の先生方、保護者の方々に多大なるご協力をいただきました。末筆ながら厚く御礼申し上げます。「伝統芸能×未来プロジェクト」では今後も様々な形でKidsプログラムを開催予定です。どうぞご期待ください


執筆者の所属・学年は開催当時

 私はKidsプログラムの「効果音ラボ」の講師として参加しました。それに向けた前日準備を通して、刀や蓑、蛇の目傘など、普段歌舞伎の舞台で、しかも遠くから見ることしかできない小道具を目の前で見ることができたのは、とても貴重な経験でした。さらに「効果音ラボ」では効果音を出すことができる実際の道具を手に取ることで、舞台上の音を再現できる喜びを感じました。このように目の前で見ること、さらに手に取って体験をすることは、舞台を鑑賞する際に新たな視点を与える体験だったと思います。実際、これまで歌舞伎の舞台を鑑賞する際は物語や役者さん、自身の研究分野である歌舞伎音楽にしか注目していなかったのに対し、本イベント後に鑑賞した際には小道具や衣装に目がいくようになりました。小道具や衣装は物語を理解するうえで必要な情報を視覚的に与え、物語の進行に欠かせないものであると、舞台を見ることでさらに理解が深まったように思います。
 また、「効果音ラボ」で講師を務めたことは私にとって新しく、やりがいのある経験でした。中学校での教職経験はありましたが、小学1年生の児童に効果音の魅力が的確に伝えられるかが大変不安でした。ところが、1年生の担任の先生方が共に講師を務めてくださったことにより、その不安は一気に解消されました。担任の先生方が児童の皆さんを指導する技術は「わざ」そのもので、私にはとてもできない「わざ」で児童をひきつける先生方のすごさを目の前で体験できました。
 実際の「効果音ラボ」の活動は、児童の皆さんの活躍のおかげで大変盛り上がりました。児童の皆さんは雨うちわや蛙の鳴き声が出せる貝を見て興奮していましたが、最も大興奮だったのは波の音が出せる小道具でした。小学1年生4人でやっと持てるような大きな器にたくさんの小豆が入っており、シーソーのように傾けて小豆を流します。児童は傾け方の違いによって変わる波の音を楽しんでいた様子でしたが、さらに注目していたのは小豆です。小豆を実際に触り、こんな小さな豆でこんな音が出るの?と驚いた様子が見られました。小豆は児童にとって生活の中でよく見るものではないだろうと考えられますが、それを触り、さらに音を出すという経験は本イベントならではのものだったのではないかと思います。
 このように貴重な経験を児童の皆さんのみならず、講師側の学生である私自身にも体験させていただいた藤浪小道具様、附属小学校の皆様には心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

比較社会文化学専攻博士前期課程2年 向田瑞貴

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