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イベントレポート 2023年度「日本の伝統芸能」 (日本芸術文化振興会との共催)

2024年3月26日更新

001文楽ワークショップ(鶴澤藤蔵さんと竹本織太夫さんによるお話) 
002歌舞伎バックステージツアー
003

能楽ワークショップ(岡本はる奈さんによる指導)

2023年3月15日、本学と独立行政法人日本芸術文化振興会(以下「芸文振」)は連携及び協力に関する包括協定を締結、その一環で2023年度より共催の全学共通科目「日本の伝統芸能」を開講しました。
1966年に開場した国立劇場は2023年秋をもって再整備のため閉場しました。芸文振の主催公演は現在も他の場所で継続していますが、日本の伝統芸能を取り巻く状況は今一つの区切りを迎えたといえます。こうした時世において伝統芸能を未来につなぐことを目指し、若い世代が一流の技芸を体感するとともに上演の裏側にも触れ、伝統芸能の保護と振興を考える機会にしようという狙いです。

授業には本学の学生・生徒のほか学外生も含め、学部生17名、大学院生9名、留学生4名、高校生6名の計38名が参加しました。今期扱った芸能は能楽、文楽、歌舞伎です。「伝統芸能とは何か?」という基本的な理解と問題設定に始まり、各芸能について入門講座、舞台鑑賞、ワークショップ、バックステージツアーを通じて多角的に学び、ディスカッションを経て各々が「伝統芸能の保護と伝承」についての意見をまとめました。講師は、座学は学外からは中川俊宏先生と山中玲子先生、ワークショップは新井麻衣子さん、岡本はる奈さん、内藤連さん、飯田豪さん(以上能楽)、鶴澤藤蔵さん、竹本織太夫さん(以上文楽)、中村京蔵さん(歌舞伎)におつとめいただきました。さらに参加者のうち数名は夏休み(2週間)に芸文振のインターンシップに参加し文化行政を現場で学びました。芸文振がインターンシップを受け入れるのは初めてのことです。
第一線でご活躍の講師の皆さまから伝統芸能を様々な角度から教えていただく大変貴重な機会となりました。また、参加者の属性(所属、年齢、出身地)が幅広いこともあり多様な意見が飛び交い、活気ある授業となりました。授業後に実施した受講者アンケートには、以下のような感想が寄せられました。

ただ観るだけでなく、事前学習やワークショップがあって親しみを持ちながら伝統芸能に触れることができました。他校の高校生や大学生とも意見交換ができて新鮮でした。これからも伝統芸能に関わっていきたくなるようなとても楽しい授業でした。(高校生)

「伝統芸能」に対する考え方を見つめなおす契機となりました。例えば、伝統芸能の保護と伝承という側面について考える際にも、様々な観点から検討することが肝要であると学びました。また、以前はあまり触れたことのなかった芸能を鑑賞しワークショップに参加することで、自身の興味がより深くなっていく感覚が非常に楽しかったです。(大学院生)

以下に詳細な参加者レポートを掲載しますのでご参照ください。「日本の伝統芸能」は2024年度以降も実施します。本学以外の学生も参加可能です。皆さまのご参加をお待ちしております。

執筆者の所属・学年は開催当時


人間文化創成科学研究科 比較社会文化学専攻 博士前期課程1年 下立藍夏

 歌舞伎が好きなこと、文化行政に関心を持っていること、新しく開講され院生も受講可能な授業であること、などから興味を持ち受講させていただきました。
 文楽、歌舞伎、能楽について、学校で事前に講義を受けた上で、観劇とワークショップという流れで行われました。事前に講義で学ぶことで、「その伝統芸能の歴史とは?」「観劇する演目のあらすじや人間関係」「初心者はどこに着目すると良い?」など、観劇の手助けになることを沢山学べたので、初めて見る芸能・演目でもきちんと理解し楽しむことができ、とてもありがたく感じました。
 観劇に加え、演者の方が実際に教えてくださるワークショップやバックステージツアー等など、実に多様で贅沢すぎる体験もさせていただきました。特に、歌舞伎との出会いが歌舞伎鑑賞教室である私は、国立劇場での歌舞伎のバックステージツアーは大興奮ものでした。花道や廻り舞台に立たせていただいて見た景色は宝物です。
 また、様々な受講生が集まることもとても興味深かったです。所属はもちろん、この授業に関心を持ったきっかけ、興味関心を抱くポイント、ディスカッションでの意見、等など、多様な考えが熱心に交わされる授業であり、いつも新鮮で発見も多く、そして何より楽しく学ぶことができました。同世代では決して多くはない歌舞伎ファンの受講生と盛り上がることができたのも嬉しかったです。
 さらに、私は、夏に行われた独立行政法人日本芸術文化振興会のインターンシップにも参加させていただきました。会の多様な業務のご説明、お稽古や舞台の見学、イベントの運営、ディスカッションなど、とても充実したプログラムでした。
 会ならではの養成事業について、恥ずかしながらこのインターンシップに参加するまでは大まかな知識しか無かったのですが、研修を見学したり、職員の方、お師匠さんや研修生さんとお話や質問をさせていただけたり、現場で見て学ぶことができ興味深かったです。直面する課題だけでなく、修了生のご活躍や来場者との交流などの希望も目の当たりにでき、強く印象に残っています。
 SNS発信やイベント発案、伝統芸能や振興会の魅力とその発信など様々なテーマについて、職員の方々とインターン生でディスカッションをさせていただいたことも大変勉強になりました。1学生・若者・歌舞伎ファンとして率直に感じる、正直なところ理想ばかり見ている未熟な私の考えも受け止めて共に考えてくださり、とても嬉しく光栄で、さらに学び考えようと思いました。現場の方が様々な現実や障壁を感じ格闘されている様子を聞かせていただき、貴重な気付きを得ることもできました。
 授業、インターンシップでお世話になりました、独立行政法人日本芸術文化振興会の方々、先生方、受講生の皆さん、本当にありがとうございました。


 人間文化創成科学研究科 比較社会文化学専攻 博士前期課程1年 山谷咲月

 「日本の伝統芸能」では、文楽・歌舞伎・能についての座学・鑑賞・ワークショップの参加に加えて、「伝統芸能をどのように保護・伝承していくべきか」など伝統芸能に関する話題について議論する機会がありました。それぞれの芸能について、座学・鑑賞・ワークショップという流れで学び、自身の興味関心と理解が益々深くなっていくことを実感していました。特に、ワークショップでは、現在ご活躍されている方々のレクチャーのもと動きの体験を行い、大変貴重な時間でした。多角的な観点から伝統芸能を捉えるきっかけとなりました。そして、受講者同士での議論は、非常に有意義なものでした。高校生から大学院生まで、多様なバックグラウンドを持った受講者がいたので、自身では思いつかなかったような意見を耳にすることもありました。このような活発な議論は、「そもそもなぜ伝統芸能を保護するべきなのか?」というような、より根本的な部分から思考し、それを言語化する重要性を認識することへと繋がりました。
 また、私は、独立行政法人日本芸術文化振興会のインターンシップに参加しました。宣伝・営業・養成事業などの業務のご説明を受けた後、実際にイベント企画や宣伝企画を立案したり、稽古見学・舞台鑑賞をしたりと、大変充実した9日間でした。そのような研修の中で、伝統芸能をとりまく環境について学び、魅力を感じたと同時に多くの課題も感じました。例えば、「周知」の難しさに関してです。伝統芸能の魅力を発信し、公演・ワークショップや養成所などへと事業同士で相互に連携しながら発展させていくことが課題であると考えました。公演の運営だけを考えれば、現在の主な観客層である50代・60代のお客様へのアプローチが中心となりますが、養成所の研修制度や国民の伝統芸能に対する認知度を向上させるためには、更なる戦略が求められるでしょう。そのために、より低年齢層に向けた発信アプローチが重要であろうと思いました。これからも、どのようにしていくべきか考えて参りたいと存じます。インターンシップでの経験が、今後文化行政に携わりたいと思う私にとって、ターニングポイントになったと言っても過言ではありません。
 授業・インターンシップにてお世話になった独立行政法人日本芸術文化振興会の方々、講義をしてくださった先生方、誠にありがとうございました。

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