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「未来へつなぐ伝統芸能」プロジェクトの発足

2021年1月25日更新

 日本は伝統芸能の宝庫です。能・狂言・文楽・歌舞伎……これだけ多様な伝統芸能が現在まで受け継がれている国は、実は世界を見渡してもほとんどありません。新しい演劇が誕生しても古い時代のそれを消し去ることなく、それぞれが時代を通じて共存し続けてきた日本演劇の伝承の特色が、現在の豊かな伝統芸能につながっています。

 伝統芸能は日本が誇る文化であるとともに、時代と国を超えるメディアといえるでしょう。過去の様式を現代の身体によって伝承・再生を繰り返すため、過去を知る貴重な手段になり、いつの時代においても同時代性を持ちます。例えば歌舞伎の場合、マンガやネットなど、今なお新しい文化を積極的に取り入れています。そして、時には言葉の壁さえも越えることができます。グローバル化が加速する現代、日本人が自らの文化を知ること、そして他国の人々に日本を知ってもらうことが求められていますが、伝統芸能はそのための有効なメディアになるのです。

 未来をになう次世代の若い人たちに、文化、すなわち人間の営みについての広い視野を培ってほしい――こうした想いのもとお茶の水女子大学では、今年度から国際交流留学生プラザを舞台に、歌舞伎などの実演者やさまざまな専門家を迎えて、伝統芸能に関わる魅力的なイベントを開催して行きます。過去を知り未来を切り開くために、豊かな日本の伝統芸能に親しんでいただきたいと願っています。

【学長メッセージ】 

 数え年3歳の頃から、母のお稽古について行って、筝曲、日本舞踊、華道など、日本の芸能・芸術に親しんで来ました。特に、毎月歌舞伎座へ通っていた歌舞伎ファンの母の影響で、小学生のころから歌舞伎座へは度々足を運び、役者さんたちの全身に神経の行き届いた美しい動きから、自分自身が舞台に立つ際の沢山のヒントを頂きました。特に、「春興鏡獅子」を国立劇場の舞台で演じさせて頂くことが決まってからは、素晴らしい役者さんたちの実際の舞台に何度も通い、毎日の様にビデオを見て、勉強していたことを懐かしく思い出します。

 理学部長として、また理事・副学長として、国立大学の法人化前後の多忙な日々を過ごすことになって、お稽古を辞めざるを得ませんでしたが、長く、日本の伝統芸能の魅力に満たされながら生活を送って来られたことは、私の生き方の幅を大きく広げてくれたと思っています。

 学長になった今も、様々な困難に向き合った時に、歌舞伎をはじめとする美しい伝統芸能のビデオや写真集を鑑賞することで心を癒され、次へ向かうエネルギーを頂いています。

 大学生や大学院生だけでなく、附属学校の児童・生徒、同窓生、地域の皆さまなど、幅広い方々に、「未来へつなぐ伝統芸能」に参加して頂きたいと思います。多くの皆さまに、日本の風土で生まれ育ち、花開いた伝統芸能の神髄を知って頂き、その精神を未来へとつなげて行って頂きたいと願っています。

 新型コロナウイルスの感染拡大で、思う様な活動が出来ずに居りますことはとても残念ですが、工夫を重ねて、皆さまに古典芸能の素晴らしさを伝える活動を続けて参りますので、ご支援とご協力をお願い致します。

お茶の水女子大学学長 室伏 きみ子
(在任期間:2015年4月~2021年3月)

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