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SDGs推進研究所設立記念キックオフシンポジウム:開催報告

2022年11月16日更新

SDGs推進研究所設立記念キックオフシンポジウム―OCHA-SDGsの新たな挑戦-

開催概要

開催日時

2022年10月19日(水曜日)14時~16時半

開催方法

対面とオンラインのハイブリット方式

参加者数

376名(会場:117名、オンライン:259名)

開催レポート

2022年10月19日、「SDGs推進研究所設立記念キックオフシンポジウム―OCHA-SDGsの新たな挑戦-」が開催された。本シンポジウムは、今年4月に設立したSDGs推進研究所の周知および、本学で新しく開始された、生活者起点のSDGs推進研究・活動「OCHA- SDGs」を紹介するとともに、様々なセクターの関係者とディスカッションすることを目的とした。お茶の水女子大学講堂「徽音堂」とオンライン配信の参加者合計は350名を超え、SDGs研究への関心の高さがうかがえた。

本シンポジウムのプログラムの特徴は、産業界、官公庁、学術界から登壇者を招聘した点にあり、「OCHA- SDGs」の期待や可能性、産官学連携の必要性についての共通認識を深めることを目指した。

新井ゆたか消費者庁長官による基調講演「SDGsは地球市民の未来」では、つくる側のイノベーション、つかう側の意識改革がSDGsの原動力になることが解説された。日本は諸外国と比較して、今の生活を守ることに精いっぱいで、次世代につなぐためにできることをしていると回答した人が少ない。一方でSDGsの認知度は近年上がってきているという調査結果が紹介された。地球市民の役割として、つかう側は色々な形で無駄をなくしていくこと、これを少しずつでもいいからやってほしい。また、つくる側の責任も進化しており、利便性と地球環境どちらも考慮した様々な取組が行われていることが紹介された。できることから始めること、これがエシカル消費に結びついていると述べられ、SDGsの中では商品やサービスの背景にあるものに思いを馳せることが重要で、それが私たちの生活を変えていくと述べられた。

続いての登壇者は、日本経済団体連合会常務理事の長谷川知子氏であった。長谷川氏の基調講演「産業界におけるSDGs推進の重要性」では、産業界がSDGsをどう捉え、どう取り組んでいるか、またSDGs推進に向けた経団連の取組を紹介された。SDGsは世界共通の言語であり、SDGsの目標を用いたコミュニケーションで企業は多様なステークホルダーとの共通理解を促進することができる。そして、新たな連携や協働が創出され、イノベーション・価値創造につなげることができると述べられた。また、サステナブル・ファイナンスの規模が世界で急拡大している点も企業、産業界がSDGsに取り組む理由として紹介された。経団連では、未来社会のコンセプトSociety5.0の実現を通じたSDGsの達成が、企業としての創造力とイノベーションを最大限生かせる手段であり、それによって企業自身の成長または価値の向上も可能になると考えていると述べられ、生活者との価値協創については、DXを通じた生活者が暮らしやすさを実感する社会の構築を目指すと述べられた。

藤原葉子研究所長によるプレゼンテーション「SDGs推進研究所について」では、本学SDGsの特徴とその役割について説明された。本学には生活者視点で衣食住を中心とする身の周りの生活をみつめるサイエンス、生活科学の分野を牽引してきた実績がある。テクノロジーやイノベーションの開発にあたっても、まずモノづくりありきではなく、主役はあくまで人、生活者からという視点を研究に生かすことが本学SDGsの特徴の一つとなる。また、附属学校園が同じキャンパス内にあるため、より若い世代とSDGsについて考えていくことが可能である。年齢の異なる学生、生徒、児童との双方向の教育は、SDGs一貫教育の新たな取組につながる可能性を示された。研究所のミッションは、これまでの基礎研究で得られた理論や知識を集め、サステナブルな社会や未来、地球のために貢献していくこと。そして研究分野や組織、ジェンダーギャップだけでなく、ジェネレーションギャップも超えたハブ機構としての役割を果たすことで、学内のエンゲージメントの強化にもつなげていくと説明された。(講演資料はこちら

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続いて、「OCHA-SDGsに期待すること」と題したパネルディスカッションが行われた。パネリストは味の素株式会社執行役サステナビリティ・コミュニケーション担当の森島千佳氏、大日本印刷株式会社サステナビリティ推進部部長の鈴木由香氏、株式会社セブン&アイ・ホールディングス執行役員の釣流まゆみ氏、本学文教育学部3年の太田朝弓さん、本学SDGs推進研究所副所長の中久保豊彦准教授、本学附属高等学校教諭の葭内ありさ先生の6名である。パネリストの方々にこれまで行ってきたSDGs研究の内容や、OCHA-SDGsに期待することについてお話いただいた。

株式会社セブン&アイ・ホールディングス執行役員の釣流氏からは、地域の方々と共に歩むことを第一に、地域社会が持続可能なものになるようサステナブル経営を推進する必要性を述べられた。社会からの期待・要請に対して対話を通して理解し、それを実践していく。その結果が持続可能な未来につながる。これをベースにサステナブル経営を続けているとお話しいただいた。未来世代が重要なキーになると信じており、OCHA-SDGsと一緒に未来に向けて進んでいきたいと述べられ、競争ではなく協調の社会をと提言された。

大日本印刷株式会社サステナビリティ推進部部長の鈴木氏は、「未来のあたりまえをつくる」というコーポレートメッセージを紹介された。SDGsが掲げるように社会課題は複雑化しており、気候変動のように一つの会社では解決できない複雑な構造になっていると指摘された。人々の期待や社会課題をきちんと理解し、イノベーションとパートナーの力を掛け合わせることで、よりよい社会にむけた課題を解決していく必要があるという見解を示され、OCHA-SDGsとはパートナーとしてつながり、生活者の皆様と課題解決にあたりたいと述べた。

味の素株式会社執行役サステナビリティ・コミュニケーション担当の森島氏は、味の素株式会社の2030アウトカム、「50%環境負荷を削減」と「10億人の健康寿命の延伸」について紹介された。「50%環境負荷を削減」ではアミノ酸バイオサイクルというアミノ酸を取り出した後の副生物の資源化、「10億人の健康寿命の延伸」では妥協なき栄養というアプローチで、おいしい減塩等について紹介された。正しいことを知って理解することが大切であり、生活者と一緒にサステナブルな価値を作っていきたいと述べられた。

本学文教育学部3年の太田さんは、高校1年時に立ち上げたサンキュー・カンボジア・プロジェクト について紹介された。カンボジアのバッタンバン州の農村と孤児院に情操教育を届けるボランティアで、東日本大震災復興支援の恩返しの思いも含まれているという。支援する側、される側という立場ではなく、お互いに協力し合うことを大切にしたと述べた。またウクライナ支援の募金活動では、募金を切り口にウクライナのことを自分事として想像し、考えて行動することを目的としたと述べ、SDGsにおいても生活者起点で何ができるのか自分事として考えていきたいと述べた。パネルディスカッションの最後に、来週学内で実施するフードドライブの活動、OCHA-SDGs学生委員募集説明会についても紹介された。

本学SDGs推進研究所副所長の中久保准教授は、人口減少に伴うインフラの構築を考えながら、温暖化対策を考える研究等、生活に関わる衛生環境を中心に研究されている。生活排水、生活ごみに関わるインフラでは様々なSDGsの分野にシナジー、トレードオフ関係どちらにもなり得るが、このような点も意識しながら、研究者には研究内容の社会実装が強く求められている時代だと提言された。研究活動がどのように社会実装として展開できるのか。それをSDGsの視点で考えることが、今の時代、研究者に求められていると述べた。

本学附属高等学校教諭の葭内先生は、附属⾼校のSDGsに関する12年のあゆみを紹介された。SDGsの具体的な行動がエシカル消費であると提言され、附属⾼校の家庭科の授業では、体験しながら学ぶことを大切にしていると述べた。また、学びをアウトプットすることで、自分事化することを目指していると説明された。2016年にお茶大連携研究エシカルラーニングラボを設立され、幼⼩中⾼⼤で様々なエシカルの取組について連携研究を行っている。高校生が小学生、中学生へ訪問授業も行っており、学びの連鎖、学びのコミュニケーションが行われていると紹介された。(講演資料はこちら

ファシリテーターを務めた菊池淳子客員研究員は、近年、企業も経営の主にSDGsを持ってきており、生き残る道としてSDGsに取り組んでいる印象を受けたと述べた。また、教育現場では早い時期からSDGsという言葉に触れ、今どういう事が求められているか学ぶ機会が増えており、小さい頃からSDGsについて考えることは当たり前になっていると述べた。引き続き様々なセクターの方とディスカッションを行い、パートナーシップを続けて研究を進めていきたいということばでパネルディスカッションを締めくくった。

限られた時間ではあったが、シンポジウム全体を通して、産官学連携、OCHA-SDGsへの期待や可能性についての議論が深められた。

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記録担当:溝添倫子(SDGs推進研究所特任アソシエイトフェロー)

*シンポジウム会場では、文中で紹介した基調講演者、パネリストのほかにも、産官学の各界からのご来賓からご挨拶や応援メッセージをいただきました。下の一覧(ご登壇順)と掲載の写真でご紹介させていただきます。

ご来賓挨拶

小池 百合子 氏 東京都知事

森 晃憲 氏 文部科学省 研究振興局長

茂木 正 氏 経済産業省 商務・サービス審議官

成澤 廣修 氏 文京区長

白波瀬 佐和子 氏 国際連合大学 上級副学長 国際連合 事務次長補

包括連携協定締結民間企業

有元 龍一 氏 日本工営株式会社 取締役会長

井阪 隆一 氏 株式会社セブン&アイ・ホールディングス 代表取締役社長

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