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ポツダム大学ペトラ=ヴァルシュブルガー教授講演会および研究発表会 開催報告

2024年3月11日更新

ポツダム大学ペトラ=ヴァルシュブルガー教授講演会および研究発表会 開催報告

2024年3月7日(木)、SDGs推進研究所はポツダム大学ペトラ=ヴァルシュブルガー先生(Dr. Petra Warschburger)を招聘し、公開講演会と研究発表会を開催しました。

研究発表会(午前)を終え実施した公開講演会「心理社会的要因が食行動と肥満に及ぼす影響: 予防と介入への示唆」(午後)には、一般の方含む76名もの方々にご参加いただき、盛況のうちに閉会しました。ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。

開催概要

【日時】3 月 7 日(木)10:00~11:00(研究発表会)、14:00~15:30(公開講演会)
【対象】本学学生・教職員(研究発表会)、一般の方および本学学生・教職員(公開講演会)
【会場】共通講義棟 2 号館 102 室(研究発表会)、共通講義棟 2 号館 102 室およびZOOM(公開講演会)
【言語】英語※公開講演会は同時通訳付
 

研究発表会では、4名の本学院生が各10分程度で研究内容の一部を発表し、ヴァルシュブルガー先生の講評をいただきました。

心理学専攻の王燕園さん(博士前期1年)の発表は、'An experimental study on the impact of emotional awareness and emotion regulation on emotional eating in East Asian college students' (東アジアの大学生における感情への気づきおよび感情制御方略が情動的摂食に与える影響) で、ネガティブな感情への自制が情動的な摂食を抑えるのかを被験者実験(中国人・日本人64名)を通して考察したお話をいただきました。

  • 王さんの発表の様子(王さんの発表の様子)
食品栄養科学専攻の佐藤清香さん(博士後期3年)の発表は、'When did older adults start their eating behaviors? – Focusing on the eating behaviors associated with frailty' (高齢者の食行動はいつ始まる?-フレイルに関連する食行動に焦点をあてて-)という題で、ライフイベントに応じ移ろいやすい食生活や行動様式を具体的に挙げ、フレイルをを予防する望ましい生活習慣について、量的、質的調査の結果を交え発表されました。
 
  • 佐藤さんの発表の様子(佐藤さんの発表の様子)

食品栄養科学専攻の濱下果帆(博士前期2年)さんの発表は、'A Study on “Epicurean Eating Pleasure” and healthy dietary habits among Japanese workers' (勤労者における『美食家の食の楽しみ』と健康的な食生活に関する研究)という題で、十分な栄養バランスや様々な野菜の摂取という点から、美食は健康を意識せずとも人々に理想的な食習慣をもたらすことをアンケート調査の結果から示唆しました。

  • 濱下さんの発表の様子(濱下さんの発表の様子)

食品栄養科学専攻の西田依小里(博士前期2年)さんの発表は、'Characteristics of those who order the appropriate  amount of food in restaurants' (飲食店で適量注文する人の特性について)という題で、ファミレス等の飲食店で人は選べる量で注文する傾向にあるものの、高所得・高学歴な女性であるほどその意識がけの傾向は強まっていくことを、質問紙調査の結果から明らかにしました。

  • 西田さんの発表の様子(西田さんの発表の様子)
それぞれの発表の間には、Warschburger先生からコメントや質問等のフィードバックをいただきました。1時間の中で4人の院生がそれぞれの研究内容を発表したことで、まさに心理と食行動を跨いだご専門のWarschburger先生と密に交流することができました。
 
  • 研究発表会を終えての集合写真(研究発表会を終えて)
    ※左: 企画者の河嵜RF
発表者の佐藤さん、西田さん、濱下さんは本研究所研究員である赤松理恵先生のゼミ生です。リレー式で日記をつづっている「やまねの成長日記」には、本研究発表会にご登壇された感想を書いていただきました。本学研究室の様子が分かる活発なサイトですので、ぜひご覧ください。

公開講演会「心理社会的要因が食行動と肥満に及ぼす影響: 予防と介入への示唆」("The influence of psychosocial factors on eating behavior and obesity: Implications for prevention and intervention")では、肥満をもたらす食行動の要因を心理社会的に分析したご研究について1時間程度講演いただいた後、20分程度で会場およびZOOM参加者からの質疑に応じていただきました。

  • 講演中のヴァルシュブルガー先生(講演中のヴァルシュブルガー先生)
肥満の促進には、その人のもつ様々な心理社会的な苦しみが要因となっており、その苦しみは主に5つの観点にまとめられるということでした:
①肥満は目に見えるために公私ともに明らかであること
②誰もが(生きる上で)摂食の当事者であるため、体重・体形管理には良識あるコメントをせず(されず)にはいられないこと
③人は各人の体重・体形に責任があり、肥満は容易に修正できるはずの行動(習慣)選択の結果であると考えられていること
④外見が印象を作る重要な要素であるため、体重超過の人は怠けていたり意志に欠ける等と断定されやすいこと
⑤肥満は美的水準を損なうという考えが体重減量へのプレッシャーになり、摂食障害のリスクを考えずにいられないこと
 
そして、肥満の解消には生活習慣を変えることが不可欠ですが、不健康な食品を控え健康的な食を摂る食事制限を行い、運動不足を解消し、悪い習慣を決めたものから着実に改めながら、上記の心理社会的な負担を軽減することが要され、以上の対処法に両親が促しかけることが、青少年には必要であるとのお話でした。
 
ご参加いただいた皆様による参加者アンケートは、今年度の本研究所事業報告書にて集計結果を記載しています(pp.47-48)。 前向きな感心を示す多くのコメントをありがとうございました。
 
青少年期の肥満は、個人内・個人間でのネガティブな反応を引き起こし、さらなる肥満を招きます。このような抜け出せない負の循環を引き起こす心理は何で、それを断ち切るのに必要な努力事項は何か、現実的で実用的な考察をいただきました。

本記事を通してヴァルシュブルガー先生に改めて謝意を表したいと思います。誠にありがとうございました。
 
  • 公開講演会会場の様子(会場の様子)
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