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12/23国際シンポジウム発表詳細

2022年12月6日更新

発表
16:50-17:20 ミッシェル・ライアン[オーストラリア国立大学 教授]

発表タイトル

「『ガラスの崖』とは?―高リスクにおける女性リーダーの役割」

発表要旨

「ガラスの崖」の研究では今よりもさらに女性がリーダーシップの役割を担うようになった際に、どのようなことが起こるかを検証している。「ガラスの天井」というメタファーを援用した「ガラスの崖」という概念は、女性は失敗や批判のリスクの高いリーダーの役割に抜擢されやすいという現象を表している。本講演では、企業業績に関する資料調査、実証研究、女性リーダーへのインタビューなどから「ガラスの崖」現象の解明に関する数十年の研究成果を紹介する。また、その背景にある心理的プロセス(ステレオタイプ、支援ネットワーク、組織戦略など)についても考察し、女共同参画の取り組みや、リーダーの役割を目指す女性との関連についても議論する。

17:25-17:55 小久保みどり[立命館大学 教授] ※オンラインでの登壇

発表タイトル

「危機の時のリーダーの選択―『ガラスの崖』と作動性リーダー」

発表要旨

危機の時にどのようなリーダーが選ばれるのであろうか。それに関してグラス・クリフ効果が研究されてきた。この効果は危機の状況で女性が持つとみなされる対人的特徴(共同性特性)ゆえに起こると説明されてきた。しかし、Kulich, Iacoviello & Lorenzi-Cioldi (2018) は、危機の時のリーダーには、男性的特徴とみなされる作動性特性も強調されてきたと指摘し、危機の時に、リーダー候補者のジェンダーにかかわらず共同性特性よりも作動性特性をもつ候補者がリーダーに選ばれる、ということを発見した。つまり、リーダー候補者が作動性特性を持つと明示されたなら、グラス・クリフ効果は起こらないという結果であった。

本研究は、女性が各分野でリーダーとなることが欧米よりも少ない日本においても同様の結果になるのか、追試を行った。ほぼ同様の結果となったが、そのメカニズムはKulich et al. (2018) とは異なるものであった。その他、危機の組織のリーダーの選択と、リーダーシップ行動、変化を起こす力との関係を検討した。

さらにオンライン実験を行った結果、リーダー選択後のリーダーの評価に次のようなジェンダー差が見られた。業績が不調な会社の社長に選ばれた後、男性リーダー、女性リーダーともに人志向、仕事志向のリーダーシップ行動のどちらも高く評価された。一方業績が好調な会社の社長に選ばれた後、女性リーダーは二つのリーダーシップ行動どちらも低く評価されたが、男性リーダーはどちらも高く評価された。

18:00-18:30 ヘレン・ピーターソン[エレブルー大学(スウェーデン) 教授]

発表タイトル

「『ガラスの崖』は越えられる? スウェーデンの高等教育における女性リーダー」

発表要旨

今から遡ること10年、スウェーデンの高等教育における女性の地位とリーダーシップは「ガラスの崖」の概念で説明された。男女平等に関する政治的目標と政策、そしてアカデミアにおける女性代表の量的目標の合意により、女性の副学長は劇的に増加したものの、彼女たちの聞き取り調査から、アカデミック・リーダーシップにおける地位の女性化は、高等教育の再編や新たな公共経営に沿った改革による影響が浮き彫りとなり、財政的な圧力や管理上の負担を増加させたことが分かった。リーダーシップの理想像の移行は、「ガラスの崖」現象の論理に従ったものであり、ますます女性は地位、功績、名声の低い不安定なリーダーシップの役割に任命されるようになったといわれている。英雄的なリーダーシップの理想は、奉仕的なリーダーシップの理想に取って代わり、これは、いわゆるアカデミック・ハウスキーピング、すなわち教育や研究に加えて行われるアカデミアでの奉仕活動に対する女性のより大きな責務を反映するものである。本発表は、スウェーデンの高等教育におけるこうしたリーダーシップの理想についてその展開を詳述するものであり、ここ2、3年について取り上げる。また、コロナ禍でのアカデミック・リーダーシップの地位に対する女性化傾向(feminization)の加速は、リーダーシップの地位に特別な影響を与えたのかということについても議論する。

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